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ネメシス戦域の強襲巨兵  作者: 夜切 怜
南極決戦

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シルエットを識る者

 クー・シーの出現で盛り上がっている者もいる。


「キヌカワさん! クー・シーですよ! 惑星アシアにもクー・シーきました!」

「クー・シーは我々御統と五行の管轄下に置こう。エイレネ。アストライアと一緒に作った敵味方識別コードを仕込んだ幻想兵器用首輪があるはずだ。急ぎ量産してくれ」

『姉さんのデータにアクセス、っと。本当にありました。急いで生産します』

「でもアシア版幻想兵器なら責任をもって飼――管理する必要がありますね」

「なあに。餌代……ではなかった。燃料は水素や金属水素だ。生成炉さえあれば維持コストは安いほうだろう」


 つい幻想兵器を動物と誤認してしまう二人。


「五行のパイロットがクー・シーに首輪をつけますね」

「ケット・シーと火車はにゃん汰君が担当だな」

「さらっと火車を押しつけないでにゃ?!」


 にゃん汰が抗議の声をあげるが、通信が途切れた。


「あ、切りやがったにゃ!」

「姉さん。艦長席に座った瞬間からある種のフラグを立ててしまったんですよ」

「助けてアストライア」

『無理です。アシア版幻想兵器が誕生するなんて。それになんですか。あのタラニス。エース機テウタテスと互角に戦ってます。ジャリドゥイールⅢの変な因子が入っていないか心配です』

「魔道火車も強いなぁ」


 それでも仕方なく、にゃん汰は広域放送でにゃーと号令を発した。


『にゃー!』

『OKだ! 俺等もいくぜ!』


 当然の如く、猫だけではなく火車も反応していた。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 フランとホワイトナイトがエース機テウタテスを足止めしている。アキレウスはケット・シーやクー・シーが翻弄して時間を稼いでいた。

 フラックは意を決して、通信を試みる。

 相手は気難しそうなパイロット、ヴァーシャだ。アルゴフォースの重鎮であることはアシア大戦を通じてフラックも知っている。


「ランスロットさん。ボクを手伝ってください。あなたしかできないことです」

「――もちろんだガラハッド。しかしどうして私なのだ。ランスロットがガラハッドの父だからか?」


 フラックという少年なら、おそらくもっと連携が取れるパイロットがいるはずだ。

 コウの敵でもあるランスロットを指名する。それにはきっと理由があるとヴァーシャは察した。


「違いますよ。――コウ兄、じゃなかった。アーサー王がいっていたんです。あなたこそが惑星アシアでもっともシルエットという乗り物を()る人物だと。だからあなたしかできないんです」


 思わぬ言葉にヴァーシャが息を飲む。


「それがアーサーの私に対する評価か。――無論だ。そうであると自負しているし、そうであり続けたいと常に研鑽している」


 ヴァーシャも誇らしげに答える。その評価こそが彼に対する最大の賛辞だからだ。


「やっぱり。アキレウスを倒せるのはボクとあなた、もしくはブルーノのみでしょう。しかしその場合、ブルーノが命を落とす可能性が高い。それだけは避けたいのです」

「了解した。アーサー王と君の期待に応えてみせよう。このランスロット。アーサー王のもっとも頼れる右腕にして、ガラハッドの父親としてな」


 ヴァーシャは自身がランスロットだという自覚を強く持つことができた。

 この少年は息子と呼びたいほど真摯な整備士であり、好敵手であるアーサー、つまりコウが認めた男として恥ずべき姿は晒せない。


「実は円卓劇もこのためです。確率は五割程度の成功率でしたが、あなたの協力で90%ぐらいにはなるでしょう。失敗することはありません」

「どういう意味だ?」

「あなたがアキレウスを足止めしてくれたら、いけます。あとですべてをお話しします。どうか信じて」

「よかろう」

「アキレウスの弱点を伝えます。――あいつ、ワーカーなんです」

「どういうことだ? いや待て。そういう意味か!」


 ヴァーシャはフラックがいわんとすることをすぐに悟った。

 何故気付かなかったのか、己を呪うほどだ。


「話が早いですね。三十五世紀の技術で製造されたワーカーこそはもっともムダの無い構造、完成されたシルエットです。戦闘用ワーカーの、さらなる強化版。それがアナザーレベルシルエットなんです」


 ワーカーの構造こそ起原にして頂点。人の意志を反映するという点においてもっとも効率的なシルエットだ。

 効率と最適解を望む超AIが製造したアナザーレベルシルエットが、非効率な方向にいくわけがない。


「なるほど。つまり可動域もワーカーに準ずると。君がアキレウスの攻撃を回避できた理由だな?」

「そうです。あなたはワーカーを研究しているはず。あなたにしかできないんです」

「アーサーは慧眼だな! それでこそ私に相応しい役目だ。しかし君はどうして可能なのだ?」

「ワーカーには子供の頃から乗っていますから。駆動域の限界も把握しています。ファミリアしかいないアンダーグラウンドフォースだったので兵器の整備は姉とボク担当だから」

「君はいつからワーカーに乗っているんだ」

「六歳の時から乗っていますのでそろそろ十年です」

「その歳で十年とはな! なるほど。思い出した。ファミリアしかいない部隊、ストームハウンド。メタルアイリスと合流した伝説のファミリア集団だったな」


 ヴァーシャも聞いたことがある。機械との親和性も、ファミリアとの繋がりも。

 そしてワーカーという乗り物に精通している理由もすべて納得できた。


「戦災孤児だった僕達は彼等に拾われ、育てられました。彼等は僕達を人間に預けようとしましたが、僕達が嫌がったんです。ワーカーに乗れるなら手伝えると。今、それが役に立っています」

「アーサーは有能だな。しかるべき人間をしかるべき場所に配置した。君の指示に従おう。私は何をすればいい?」


 整備士という職業はヴァーシャにとっても欠かせないもの。構築技士の基礎ともいえる。

 むしろ自分で整備できない者を軽視する節もあるヴァーシャにとって、フラックは好ましい人間と映っている。


「五秒、時間を稼いでください。聖杯を起動します。ボクが以前使った武装を再製するんです」

「五秒だな。やり遂げてみせよう」


 ヴァーシャも永遠の火を使う覚悟を決めた。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 残り二機のテウタテスにクー・シーやタラニスが戦闘を開始している。

 六番機をホワイトナイトとクー・シーや魔道火車が援護し、タラニスは一機でエース機のテウタテスを押さえ込んでいる。


「やるなぁ! お嬢ちゃん。獣みたいだ!」

「よくいわれます!」


 六番機の戦い方と、クー・シーとケット・シーたちの連携は見事だった。

 超反応相手に野生の勘だけで連携している。


「死ねやぁ!」

 

 車輪から電光を発しながら、超反応のエース機テウタテスを一機で押さえ込んでいるタラニスも強かった。

 距離を取ったら肩に通している巨大な車輪をヨーヨーのように飛ばしてくる有様だ。


「俺様が自走爆雷だってことを忘れるなよ!」


 性能も元となったエース機用テウタテスより上のようだ。

 エース機テウタテスが他の獲物がいないかサーチを開始した。

 タラニス相手は嫌なようだ。


 他のケット・シーやクー・シーは魔道火車も量産型のテウタテスへ攻撃している。


「猫と犬には敵味方識別信号用首輪を配布予定だ! 敵ではないぞ。攻撃しないように!」

「わかってますって!」


 コウの呼びかけにリュビア遠征組が応じる。幻想兵器との連携は慣れたものだ。


「なんだこのデタラメな兵器は!」


 アレクサンドロスⅢが絶叫し、ケット・シーやクー・シー排除を試みるが野生動物に匹敵する素早さで回避する。


「アシアの怒りですよ。貴女は彼女の心を傷付け、彼女が育んだ大地を蹂躙した」


 フラックが惑星アシアの住人の願いを一身に背負って、アレクサンドロスⅢに告げる。


「そういう貴様は何者だ!」

「ボクは整備士(メカニック)。戦乱の惑星アシアに生まれた戦災孤児で、ストームハウンドのファミリアたちに育てられた、彼等の息子。ただのメカニックです。あなたはどこにでもいる、ただの惑星アシア人に倒されることになります」


 その言葉を通信越しに聞いて、リックは溢れる涙を拭おうともしなかった。


 ストームハウンドはアシアを救出しようともしない人間に不信感を抱いたファミリアたちで結成されていたアンダーグラウンドフォース。

 ファミリアのみで構成されており、シルエットはないものの、戦車と装甲車、榴弾砲を駆使してマーダーと対峙し続けていた。

 そんな彼等の息子と堂々と名乗った少年が、今惑星アシアの命運をかけて最前線にいる。


 つられて泣くファミリアも多く、戦場にいるファミリアの士気が跳ね上がる。

 

「俺を倒すというのか、貴様が! とるにたらぬ人間の少年よ!」

「倒します。そしてあなたがアレクサンドロスⅢの名を騙った、ただのエウロパ人の死骸だということを証明してみせましょう」


 コウも、そしてその場にいるヴァーシャも笑みがこぼれた。

 バルバロイは遥か昔に死んだ者であるとフラックは言っているのだ。


「貴様! 俺を愚弄するとは! 許さん!」

「冷静さを欠いているなアレクサンドロスⅢ。本当にサイボーグか貴様は。――永遠の火発動。潜在能力[光化]」


 ヴァーシャのボガティーリが手刀を受け止める。彼の愛機が発動する潜在能力は光化。熱エネルギーや運動エネルギーを光エネルギーに転換し、機体のダメージを無くすというものだ。

 一種の対消滅を利用するものだが、発生するエネルギーはフェムトメートルサイズの余剰次元に吸収される。


「邪魔をするな!」

「レオ。ランスロットの名に賭けてお前はここで止める」

「その芝居に何の意味があるのだ! 鬱陶しい!」


 アキレウスの攻撃をすべて凌ぐヴァーシャ。


「このためですよ」


 ボガティーリの背後にいたフラックのラニウスが、聖杯を天に掲げている。


「あらゆる罪をこの聖杯へ。――再製(リプロダクション)


 己の潜在能力を発動しながらフラックは聖杯に祈る。

 ツインリアクターが悲鳴をあげる。潜在能力の代償として機能を喪失するのだ。

 

「この世すべての罪に赦免(しゃめん)を――。残念ながらそんな慈悲は持ち合わせていません。侵略者滅ぶべし。円卓の騎士はそのためにいるのですから」


 フラックは侵略者に対して口上を述べた。

 マーリンことアベルの唇の端が笑みに浮かぶ。

 彼の策は成った。


「邪魔だ! どけ!」

「させん! 私も興味があるんでね! ――息子も守らないとな!」


 フラックが何をするか、一番間近で見たい。とんでもないことが起きる予感があった。

 興味もあるが、ガラハッドの父親ランスロットという役割に恥じぬ戦いを。その一心でヴァーシャは奮闘しているのだ。

 

いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!


マーリン  「ランスロットがチョロすぎr……ガラハッド少年経由で王の評価を伝えたことが功を奏したようですな。これでランスロットも奮起するでしょう。さすがは我が王。人を乗せるのが上手い」

アーサー  「いや、普通に俺個人の評価を伝えただけだが……」

マーリン  「そういうことにしておきましょう。わかってますよ、我が王」


・ワーカーはプロメテウス設計です。初言及はep273。こんなところにアナザーレベルシルエットの弱点があったのですね。

 ep430にも詳細が記載されています。現在のものは時代に合わせたコストダウンを図られたものです。

・フラックの生い立ちはep43。初出が11歳なのであれから五年経過しているのですね。コウもアラサーです。マールはとくにフラグも立たずに18歳に……

・237話ソードダンサー参照。コウの評価はこの時点で確立されています。

・タラニスの自走爆雷機能は両輪をヨーヨーのようにぶつけることで威力を発揮します。両輪をつけた完○超人がいたような気もしますが、飛ばします。

・この場合の聖杯はキリストの血を受けた、アーサー王伝説の聖杯です。赦免は無理でしょうね!


次回予告「聖杯起動」! 聖杯が真の力を発揮します!


応援よろしくお願いします!


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― 新着の感想 ―
237話ソードダンサー参照。 見本があったとはいえAIの補助無しで、ボガティーリを一から設計したヴァーシャは、確かにアシアで一番のシルエットを識る者です。
にゃん汰さん、拒否しちゃいけない司令塔。君が自分で立候補したんだよねw >「ネコ通訳の地位ゲットにゃ…… 良かったにゃ……」(ep329) ヴァーシャに対するコウの評価は一番上かー。筋肉装甲のヒョウ…
ある意味完成度が高い故に弱点というか出来ることの限界がヲタにはよく分かるのか
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