超反応
2022/07/22 風神雷神が逆だったので修正しました。ご指摘感謝です!
三人が準決勝に向かうため、それぞれの機体に乗り込む寸前に、主催者であるバーンが現れた。
いかにも人間らしく、扉から入室する。
「試合直前にどうも! 三人に連絡がありまして」
「どうしたバーン。試合直前に珍しいな」
「なに? この若い女がバーンなのか!」
初めて見るバーンに驚愕を隠せないバルド。
「もうあなたの上司にも正体はばれてまして。隠す必要もないですね。バーンこと超AIヘスティアです」
「な……んだ……と」
超AIのビジョンを初めて間近でみるバルドにはショックだった。人間と区別がつかない。
足音から服の揺れ、気配。どれも人間そのものだ。
コウと兵衛はアシアやアストライアで慣れているので驚きはない。ただヘスティアは能力が制限されている二人よりも遥かに人間らしい解像度であることは確かだった。
「試合中、お三方の会話はトライレーム及びアルゴフォース関係者にも配信されます。呉越同舟の最中、内緒話はほどほどに、ということですね」
「俺らはそんなにまずい話はしてないよな? コウ君」
「ええ。してないはずですが」
「俺もだぜ。なぜわざわざ俺たちにそんなことをいうんだ」
バルドがヘスティアの真意を測りかねていた。
「片方だけに情報を流すと不公平だからですよ。アルゴフォースといってもヴァーシャとヘルメスぐらいしか脳みそ入ってないでしょうし」
「きついな」
コウが思わず苦笑する。
「テウタテスのパイロットであるバルバロイはヘルメスのいうことなんか聞きませんから。――彼らはヘルメスにとっても必ずしも味方になるとは限りません」
「どでかい政治問題をさらっと絡めてくるんじゃねえ。俺は聞かなかったことにさせてもらうぜ!」
ヘルメスとバルバロイに関する話など関わるだけリスクが大きすぎると判断するバルド。
「俺等はまとめて敵対しなくちゃいけないからなあ」
「構築技士のみんなに情報共有できる分、助かるのか……」
「俺はリスク大ありだな。ヘマするとヴァーシャに怒られる」
「そうですね。今回最大の被害者はバルドさんでしょう。逆に言えばその程度しか三人の会話にリスクはありません」
あっさりとその事実を認めるヘスティア。
「きっつい女だな。ヘスティアってやつは」
バルドも思わず苦笑い。確かに戦闘中長々と会話するわけでもない。
「ヴァーシャの性格からして減点方式でしょうから。あなたがコウと兵衛よりもヘマしなければいいだけの話ですよ」
「容赦ねえ話だが、違えねえ」
肩をすくめて事実を認めるバルド。ヴァーシャは加点方式の評価はしないタイプであった。
「あなたたちがどう戦うか私も楽しみです。それでは」
にっこり笑って消えるヘスティア。
「相変わらず神出鬼没だな」
すでに慣れたコウが呟く。
「お前よくあんな連中と付き合ってられるな」
超AIに慣れすぎているコウに、若干引いているバルドであった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
準決勝が始まった。
三機のシルエットは地下闘技場〔パライストラ〕に入場する。
すでに待ち構えている二機のテウタテス。
四臂――四本腕。本来のシルエットではありえない異形。見慣れないライフル状の武器をそれぞれ四本腕に装備している。近接武器は所持していないようだ。
白色と碧緑色の四本腕機体は兵衛のいう仏像のようであった。
「敵がわかりやすいカラーリングしてくれるな。碧緑色は風神、白色は雷神って呼ぶか」
「わかりやすいですが、そのままですね……」
風神は碧緑、雷神は白の鬼神で描かれている風神雷神図は有名だ。
「油断するなよ」
「おう」
「わかりました」
斬り込み隊長はバルド。兵衛とコウはバルドに合わせて臨機応変に対処する。
「今回の観客は豪華だからな。A級構築技士一同だ」
「そうですね。アベルさんたちも観戦していますし、アルゴフォースの人間もおそらく」
「この場所にいるぜ。連絡があった」
「そうか。やはり」
注目度が高い試合だ。当然構築技士たちの関心は高いだろう。
彼らがどう戦うか。構築技士であり、惑星アシアが誇る凄腕パイロットでもある。データを取るにしてもこれ以上のメンバーは望めない。
「俺たちはいつものように戦うだけさ」
兵衛の言葉に二人は頷く。実験など毛頭考えていない。テウタテスは全力で撃破しにいく。
試合開始を知らせるブザーが鳴り響いた。
三機は一斉に、三方向へ散った。
バルドは飛翔し、コウと兵衛のラニウス二機は左右だ。
「ぐあぁ!」
飛翔した瞬間、地面に落下するボガティーリ・コロヴァト。その様子をみて、右眉を吊り上げるヴァーシャである。
「な、何が起きた?」
「動きが読まれているな。俺も被弾した」
「同じく!」
被弾をしている五番機と兵衛のラニウス。
速度を落とし、踏ん張って停止した。
上昇を終え、加速する前に大きな衝撃を受けたボガティーリ・コロヴァトは運が良かったというべきだろうか。
相対速度でさらにダメージは深かったはずだ。
「俺たちの動きを読んでいるのか」
転がったままのボガティーリ・コロヴァトはさすがに凄腕の傭兵バルド。
その姿勢のままライフルを構え、狙いを定めようとした。
射撃は許されなかった。テウタテス二機が転倒しているボガティーリ・コロヴァトに猛射を浴びせかける。
地面を転がって回避するボガティーリ・コロヴァト。さながら特殊部隊の歩兵だ。
「何かしようとした途端、反応してきやがる!」
バルドがぼやく。
「かといって無言だと削られる。あの連射速度に弾速はおそらく連射式のガウスライフルか」
アストライアに兵装の知識を叩き込まれているコウが武装の正体を見抜いた。
「コイルガンの一種だっけか」
「そうです。初速はレールガンより劣りますが、消費電力を抑えることができます」
兵衛の問いにコウはすばやく回答する。この緊急時、情報共有は最優先だ。
「残りの大型兵装は携行式の滑腔砲だな。おそらく複数の兵装を動かすためにはエネルギー不足ってことだろう。大口径レールガンだと反動制御も無理ってことだな」
バルドもテウタテスの兵装を分析している。
「あの砲弾の威力なら、電磁装甲である程度は耐えられるな。問題はあの反応速度だ!」
「レバー入力に反応して行動する格ゲーに似ている……」
「なんだそりゃ? ゲームだろ。知ってはいる」
バルドが思わず訊ねた。ヘルメスやヴァーシャにやらされたことはあるのだ。ヴァーシャの巻き添えである。
「アルゴリズムで動いてはいるんだが、操作しているキャラの動きを入力すると反応するように出来ているゲームだ。俺の時代でも大昔のゲームに多かった」
「クソゲーじゃねえか!」
「そうだ!」
コウは断言した。レバー入力反応のCPUアルゴリズムなどクソゲーである。まずパターンで嵌め殺すしかない。
「ゲームならパターン嵌めできるんだが。俺たちの操作を盗みみているわけじゃあるまい」
「なんとなくわかったぜ。シルエットの極わずかな予備動作を見て予測しているんだろう。西洋の剣術だと胸筋の動きで相手の動きを読むものがあるそうだ」
「懸かりに反応するということですね」
「わずかな動きで読んでくるんだ。機械相手にするってことはああいうことをいうんだろうな」
「どうすりゃいいんだ! 何か無いのか!」
バルドはなんとか丘陵を利用し身を隠した。被弾上等で突っ込むしかないが、それも対応されるだろう。
「撃ち合いも斬り合いのカウンター狙いも不可能だな」
「テウタテスの装甲は厚くて硬いな。おそらくアンティーク・シルエットに近い装甲材か……」
テウタテス二機はバルド機を集中的に狙っている。その間にDライフルで撃ち返すコウと兵衛だったが、装甲を抜くことはなかった。
向こうは通常のシルエットよりも巨体だ。その分装甲は厚いだろう。
「装甲は接近戦でなんとか抜くさ。しかし至近距離に近付くまであの超反応はどうするんだ?」
「決まっている。それは――」
コウの一言に、二人は即座に意図を理解した。
いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!
私事で恐縮ですが基礎疾患持ちなのでワクチン四回目接種して、副反応の真っ最中でしたがようやく落ち着いてきました。
今のオミクロン株A5型は現行ワクチンの抗体をすりぬけやすいということですが、他の手段がとくにないという状況で致し方なしです。
今回はファイザーでしたが、前回のモデルナは本当にきつかったので、コロナも早く収束、弱毒化(後遺症無しレベル)して欲しいものです。
テーマは超反応です。
古い格闘ゲームには結構多かったですね。ワーヒーとか(古い)。プレイヤーの技術向上の結果、CPUをチートするしかなかった時代です。当時はインチキCPUなどと言われてましたね。
超反応ゆえのパターン嵌め的なものもあったのですが、さすがにバルバロイさんはそこまで貧弱なCPUではありません!
テウタテスは惑星間戦争時代に近い技術ではありますが、抜けも多く工夫で普及した装甲筋肉などもありません。
現行シルエットは一部では惑星間戦争時代の技術よりも有利な点があります。
コイルガン、市販もされているのですが大型の割に威力は22口径ライフルと同程度。物騒な玩具ですね! 実際カテゴリは火薬を使わないのでエアガンだそうで。
ガウスライフルは電力消費も低くて良いのですが、初速がどうにもでない欠点があります。マイナス270度の超伝導を崩壊させる仕組みを利用したソレノイド・クエンチガンもあるにはあるのですが、超冷却を毎回崩壊させないといけないので連射は無理だろうなと。
大型兵器にはよさそうです。
超反応CPUは飛ばして落とせ! 市販コイルガンは重量9キロ! 続きを楽しみという方は↓にあるブクマ、評価で応援よろしくお願いします。
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