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ネメシス戦域の強襲巨兵  作者: 夜切 怜
兵器開発施設

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覚醒候補者

「コウ。アストライアを動かすにしても、やはり人手はいる。完全無人で運用できるといってもね」

「当然だよな。艦船って凄い人数いるとは聞いたことがある」


 アストライアを運用するにあたって、当面の問題は人手だった。


「仕事の引き継ぎ、ではないが。アストライア。覚醒候補者へのデータリンクはどうかな」

『順調です。コウのいた二十一世紀に至るまでのデータ付与と、ここまでの師匠の経験は共有し覚醒されます』

「覚醒候補者?」

「このアストライアを動かすにしても、工廠だろ? 技術者や整備担当のファミリアとセリアンスロープで希望者が冷凍睡眠状態になっていたんだ」

「彼らが師匠のいっていた仲間なんだ。候補者というなら、まだ他にいるの?」

「いるよ。だけどやたらに目覚めさせて大人数になっても仕方ないだろ? 私が選んでおいたよ。もちろん人間への相性はあるが、コウとは良さそうなのは間違いない。それは私が保証しよう」

「それはありがたいな」


 話しているとコウの前に三人の来訪者が現れた。

 話していた覚醒候補者だった。


 皆、起きる前に師匠からコウとの出来事や、コウのいた時代のデータを共有されている。


 犬耳で淡い茶髪が腰まで伸びた、長身の少女。

 もう一人は茶髪に黒が入った、小柄な猫耳少女。大きな瞳が印象的だ。

 最後の一人は大きな熊そのもの。

 前者二人はセリアンスロープで、最後は師匠と同じファミリアなのだろう。


 コウは師匠を抱きかかえ、彼らと面会した。


「はじめまして。コウ。私たちが目覚めるのは千年以上ぶりですね。よろしくお願いします」

「おはようにゃ」

「よろしくな坊主! 俺はファミリア代表だ。ファミリアは他に少しいるし、大型機械も一人いてな。シルエットサイズといえばわかるか。後ほど紹介する」


 熊は明らかに男性型だ。


「はじめまして。俺はモズヤ・コウ。君たちの名前を教えて欲しい」


 三人は顔を見合わせ思案する。


「俺たちは役割しかなくてな。例えば俺は整備担当の熊、って具合に」

「え?」

「私達は工作機械でありペットであり道具にゃ」

「うむ。コウ。これが彼らのいた時代の人間のやっていたことだ」


 いささかばつが悪そうに、師匠がいった。コウがわずかにむっとしたことに気付いたのだ。


「名前もないってどういうことだ……」

「人間との明確な区別を必要とした、といったところだね」

「あなたが名前を付けてくれると嬉しいのですが」


 長髪の少女が薄く笑いながら言った。


「いいの?」

「ええ。惑星間戦争時代の私達をヒトと認定しない人間はそこそこいたのですよ。あなたはありがたいことに熊を含めて私達をヒトと認識しています」

「そういうことだな。もちろん人間の伴侶になれば名前を付けることになるが…… 彼女たちはそうなる前にさっさと休眠してしまったのだ」

 

 師匠が相性がよいと言った理由がわかった気がした。


「素敵な名前を付けるにゃ」

「そうだな。わかった……」


 猫耳少女を指差し、


「じゃあ、にゃん汰」

「何そのふた昔前のJKみたいな名前!」

「なんでふた昔前のJKってわかるんだよ…… ほら、猫だし可愛いし?」

「可愛い……ね。許してやるにゃ」

 

 意地悪い笑顔でどや顔しているにゃん汰。切れ長の瞳が印象的だと思った。


 次に犬耳少女を見る。美少女というよりは美人という印象だ。


「アキかな。俺の故郷の季節の秋。その素敵な髪色は紅葉っぽいし」

「素敵だなんて嬉しいこといわないでください……  喜んで!」


 アキは顔を真っ赤にして、しかし嬉しそうに微笑んだ。


「なんでアキだけ情緒溢れる名前なのかにゃ」


 じと目で睨んでくるにゃん汰から、気まずそうに目を逸らすコウ。


 最後、目を輝かせて期待溢れる熊にコウは言った。


「クマー?」

「却下だこの野郎。まんまじゃねーか。真面目に考えろ」


 速攻で却下された。懸命に考える。


「映画で人間と一緒に戦場で作業する熊をみたことあるんだ。そこから…… ヴォイっていうのは」

「おお、ヴォイテクか! 熊としては光栄の限り!」


 ヴォイはいたく満足げだ。


「ああ。よろしくな」

「私達は師匠のデータをもとに、コウや現在のこの星の状況を把握してるニャ」

「ええ。あなたが何もわからない現状も把握しています。私達でサポートしますのでご安心くださいね」

「ああ。頼むよ」

「んじゃ俺はさっそく五番機を見させてもらうよ。コウのお世話は二人に頼んだ」

「了解にゃ」

「はい。お任せください」

「コウ。頑張って女の子二人の好感度あげときな」


 品の無いおっさんのような下卑た笑いをしながらヴォイは出て行った。


「師匠。好感度って?」

「彼女たちの好感度が上がると、お世話できる範囲が広がるんだよ。前に話した通り、初期型のセリアンスロープは減りすぎた人類の補充も兼ねているから」

「ん。よくわからないが、嫌われないようにしよう」


 師匠はコウから飛び降り、てくてくと二人に歩み寄る。


「こんな奴だからよろしく頼む」

「成人男性、ですよね?」


 アキが真顔で師匠に尋ねている。 


「間違いなく。良い意味でノーマルだ。悪い奴じゃないよ」

「安心しました」

「アキの好感度は最初から高そうにゃ。負けフラグにゃ」

「ブルーさんがいますしね。苦戦は必至です。負けませんからっ」

「みんなして何の話をしてるんだ?」

「お子様にはわからない世界にゃ」


 よくわからない話をしている三人に、不安を覚えるコウだった。

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