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AIの旋律  作者: KIJIMUNA
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卒業式

さて、学校に着きました。今日は卒業式です。

学校になんとか間に合うと既に式は始まっていた。

卒業式はスーツのやつが殆どだったが、袴姿も何人か見られた。


女子に至っては髪の毛をこれでもかという程盛って振り袖姿だったから、正直誰が誰なのか分からなかった。男でもおそらく勇者なのだろう、ド派手なショッキングピンクの袴を着た男が悠々と歩いていた。あれおかしいな。ここってそこそこ名の知れた国立大学だよな。成人式じゃないよなと思いながらも、特に大学に思い入れもなく明日から学生でなくなる自分にとっては、どうでもいい話だった。


「おっほん、えー、君たちは明日からここの卒業生となるとともに、今後は社会を支える若者となるわけで云々」


おかま口調の教授のどうでもいい話が聞こえてくる。なぜか若者がバカ者に聞こえて腹が立ってきた。


式が終わった後はみんなの顔が急に色めき立つ。何だかんだ言って緊張していたのだろう。


「聡は4月からどうすんの?」


いつも一緒に経済の講義を受けていた佐藤浩二が聞いてくる。


そう、俺には4月から働く当てがないのだ。周りでは、トヤタだのアーシン精機に行くだのといった声が聞こえてくるが、すべては俺には関係のないことだった。


「知らん、とりあえずなんかバイトでもやって食いつなぎながら適当に就活続けるわ。」


「ふーん、そっかあ。なんて言ったらいいかわからんけど聡ならなんとかなるでしょ。頑張ってね。」


こういう時に、急に哀れむべき対象を見るように上下関係を作って、人に上から目線で指摘したり、求めてもいないのにアドバイスしてくる人間があまりに多い。そんな中でも浩二はいつも対等で俺を信じてくれる非常にありがたい存在だ。


「今日は焼き肉食べに行こう!」


雅哉と浩二の他に仲の良い数名で食事に行く。ネオンライトの灯る繁華街の中に今朝まで大学生だった男たちの姿は吸い込まれていった。





チュンチュン... どこかで鳥が鳴いている。朝なのか、昼なのかよくわからなかった。卒業生からもうすでに何日か経過しているのに、相変わらず就職は決まらないし、就職はおろかバイトすら決まる兆しがない。世間の既卒に対する眼は、犯罪者に対するそれと同じくらい厳しいようだ。結局、世の中は学校の成績なんかじゃないんだ。持ち合わせている素質をどううまく活用するかにかかっていると聡は思った。父親が警察官である聡も将来は必然的に自分もそうなるのだと確信していた。しかし、現実は違った。身体測定や体力測定に引っかかり、警察学校の門戸すら叩けなかった。


そういえば前にキャリアセンターの職員が言ってたっけ。就職は恋愛みたいなもんだと。勉強できないやつでも生徒間や教授とうまく人間関係を作れる奴は、面接官ともうまくいくのだろう。結局のところはそいつと働きたいかどうかってところで見られてるんだなと聡は落胆する。


はあー、こんなことなら在学中にバイトしておくか、できることなら正社員登用制度のある会社で働いておけば良かったな。なんて今更考えても遅いか。あれ、待てよ。おもむろに求人情報誌を開いてみる。そこにはつい最近過労死で問題になっている会社の名前が書いてあった。テレビでは連日取り上げられるが、社長の発言が問題視されていて、社員の命より会社組織や顧客を重んじる態度が批評を買っている。


おもしれえ、やってやろうじゃねえか。自分がどこまでやれるのか。

聡は意気揚々と携帯電話に手を伸ばした。

式って書いてあるんだから遅刻しちゃだめでしょって言いたい所ですが、話の中で出てくるド派手なショッキングピンクの袴って私の事です。それぞれが思い出に残る人生の区切りとすることができれば、それで良しなんじゃないでしょうか。

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