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「なんとなく惹かれる」を信じていい  作者: アレックス・フクリー
4)身体の相性を、見て見ぬふりしない

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4-5)“セックスレス”が起こる理由と、“したくなる関係”のつくり方

「嫌いになったわけじゃない。でも、そういう気分にならない」


 パートナーとの関係が続いていくなかで、どこかからふっと訪れる“セックスレス”という現象。多くのカップルが一度は直面するにもかかわらず、それについて深く語られる機会はあまりありません。でも、だからこそ言いたいのです。セックスレスは特別なことではないし、“終わり”でもない。そしてなにより、そこから再び“したくなる関係”をつくることは、十分に可能なのだということを。



【「したくない」の理由は、欲求だけじゃない】

 セックスレスという言葉の裏には、「したくない」という明確な意志があるように聞こえるかもしれません。けれど実際には、「したい/したくない」の二択で語れない複雑な心理状態がそこにあるのです。

 たとえば、生活の忙しさや体調、子育てや仕事のストレスなど、日常の"摩耗"によって、「そういう気分にならない」こともあります。夜遅くまで働いて帰宅したとき、翌日の早起きが気になるとき、子どもの世話で疲れ切っているとき—実は性欲よりも「眠りたい」という欲求が勝ってしまうのは、ごく自然なことです。パートナーに対して嫌悪感があるわけではない。むしろ好きだからこそ、「もっと元気なときに気持ちよくなりたい」と思う気持ちが先送りの原因になることもあります。

 また、長く一緒にいるがゆえの心理的変化も見逃せません。「もうわざわざ求めなくても伝わっているだろう」という油断や、時間の経過とともに増していく恥ずかしさが前に出てくることもあります。初めて会ったときのドキドキ感や好奇心は自然と薄れていくもの。それは愛情の減少ではなく、関係性の変化なのです。

 あるいは、性欲そのものはあるのに、パートナーに対しては感じないという状況も少なくありません。これはとても苦しい状態ですが、その背景には、"性"を通じたコミュニケーションがうまくいっていないことがあります。一方が「察してくれるだろう」と思っていて、もう一方は「拒まれたくないから言えない」。そんなすれ違いのまま、触れ合いがフェードアウトしていく——というのは、実際によくある話です。



【性的コミュニケーションの断絶とその影響】


 セックスレスの根底には、しばしば「性について話せない関係性」という問題が横たわっています。社会的に「性は語るべきではない」という風潮があるため、パートナー同士でさえ、性的な欲求や不満、希望を率直に伝えることが難しいと感じる人は少なくありません。

「気持ちいいところはどこ?」「どうしたら喜ぶ?」といった会話ができないまま年月が経過すると、お互いの身体の変化や心の変化に対応できず、性的な満足感は徐々に失われていきます。特に女性の場合、ライフステージの変化(出産、更年期など)によって性的感度や欲求が大きく変わることがあります。そうした変化について話し合えないまま、以前と同じ関係を続けようとすると、どちらかが「もう気持ちよくない」という状態に陥ってしまうのです。

 さらに、一度セックスレスが始まると、「久しぶりだから変に思われるかも」「自分から誘うのは恥ずかしい」という心理的ハードルが上がり、再開するタイミングを失っていきます。そして時間が経てば経つほど、「もう話題にしないほうがいいのかも」と、性的なコミュニケーションから逃げる習慣が身についてしまうのです。



【“快楽”に対するネガティブな感情】


 もう一つ見逃せないのが、快楽に対するブレーキです。

 特に女性の場合、「ちゃんとして見られたい」「軽く見られたくない」という無意識の思いが、自分自身の欲求にフタをしてしまうことがあります。社会的に「女性は受け身であるべき」「積極的に性を求める女性は品がない」といった古い価値観の影響は、意外と根深いものです。快楽を求めたいのに、心のどこかで「そんな自分をパートナーに見せていいのか」とブレーキがかかる。

 男性の場合も、「常に主導権を握るべき」「いつでも元気でなければ」というプレッシャーに苦しむことがあります。実際、40代以降の男性の約3割が何らかの勃起不全(ED)に悩んでいるというデータもありますが、その多くは「パートナーに弱みを見せたくない」という心理から、問題を放置してしまいがちです。

 また、過去の性経験のなかで「相手に合わせすぎた」「気持ちよくなかったのに演技をしてしまった」「嫌だったのに断れなかった」といった経験があれば、セックス自体が"我慢するもの"として体に記憶されてしまっている可能性もあるのです。そうした否定的な記憶がトラウマとなり、無意識のうちに性的な接触から身を遠ざけてしまうことも少なくありません。

 快楽に対してオープンになれない状態では、「したくなる関係」を築くのは難しくなります。だからこそ、自分自身の中にある"快楽への肯定"を育てていくことが、パートナーとの再接続の一歩目になるのです。



【“再接続”のヒントは、小さな身体的な安心感】

 セックスレスから再び触れ合いを取り戻すためには、「よし、今日から週1でセックスしよう」とルールを決めることではなく、身体的な安心感を積み重ねることが大切です。

 たとえば、ハグや軽いキス、肩にもたれる、手を握る——そうした"性的でないスキンシップ"を意識して増やすだけで、身体の記憶がゆっくりと「安心していい」「触れられるって心地いい」と思い出していきます。特に、日常生活の中で自然な形でスキンシップを増やしていくこと。寝る前に少し長めのハグをする、朝起きたときにほっぺにキスする、テレビを見ながら手を握る—こうした「性的でない触れ合い」が、身体の緊張をほぐし、次第に「もっと触れたい」という気持ちを呼び覚ましていくのです。

 プレッシャーのない触れ合いを通じて、お互いの体温を感じること。それは「この人と安心していられる」という感覚を取り戻す、最も効果的な方法なのです。



【言葉で紡ぐ、新しい関係性】


 また、お互いにとって気持ちいいことを言葉にする練習も効果的です。「こうされると嬉しい」「この触れ方が好き」というポジティブな言語化は、感覚のキャッチボールを再起動させます。

 実は多くのカップルが、性的な好みについて十分に話し合わないまま関係を続けています。でも、パートナーは「あなたの体の取扱説明書」を持っているわけではありません。自分の好みや感じ方を言葉にして伝えることは、お互いの満足感を高める最も確実な方法なのです。

 最初は恥ずかしいかもしれませんが、「ここに触れられると気持ちいい」「もう少しゆっくり触れてほしい」といった小さなフィードバックから始めてみましょう。そうした会話を重ねるうちに、「性について話す」ことへの心理的ハードルは下がっていきます。

 そのうえで、"したくない"のではなく、"気持ちがつながっていない"からスイッチが入らないだけなんだ、という認識を共有することも大切です。「あなたが嫌いなわけじゃない」「問題は性欲ではなく、コミュニケーションなんだ」と、言葉で互いを安心させること。それは、罪悪感や不安を解消し、新しい関係性への一歩を踏み出す力になります。



【二人だけの「性のリズム」を見つける】


 セックスレスを経験したカップルが陥りがちな誤解は、「以前と同じ関係に戻らなければならない」という思い込みです。しかし実際には、年齢や環境の変化に伴い、性的欲求のあり方や表現方法も変化していくもの。大切なのは過去を取り戻すことではなく、今の二人に合った「性のリズム」を新たに見つけていくことなのです。

 たとえば、若い頃は夜のベッドでのセックスが中心だったカップルも、年齢を重ねるにつれて「朝の方が体調がいい」と感じるようになるかもしれません。あるいは、子育て期は短時間で満足感を得られる方法を模索したり、更年期以降は前戯を長くとるスタイルに変化したりすることもあるでしょう。

 こうした変化を「衰え」と否定的に捉えるのではなく、「二人の関係の成熟」として受け入れていく姿勢が大切です。人生のさまざまな段階で、性的表現のあり方は変わっていくもの。その変化に応じて、二人だけの「心地よさのカタチ」を柔軟に更新していくことが、長く続く関係を支える秘訣なのです。



【欲求は、悪ではない。むしろ、関係の熱量のバロメーター】


 私たちは、ともすると「性的欲求」を"自制すべきもの"として見がちです。特に日本社会では、欲求を表に出すことをためらう風潮があります。でも、それは違います。欲求は、ふたりの関係に温度がある証拠です。むしろ、パートナーに対して「もっと触れたい」「気持ちよくなってほしい」と思うことは、愛情のひとつのかたち。"したくなる"という気持ちは、関係の熱量を支える大切なエネルギーです。

 性的な欲求は、実は非常に繊細なもの。ストレスや疲労、不安、信頼関係の揺らぎによって、すぐに影響を受けてしまいます。だからこそ、「欲求が湧かない」状態が続くときは、それを単なる「性的な問題」と片付けるのではなく、二人の関係性や生活環境、心理状態を見直すサインとして捉えることが大切です。

 また、欲求の表れ方は人それぞれ。同じ「したい」という気持ちでも、ある人は身体的な接触を求め、ある人は精神的な親密さを通じて性的興奮を感じます。パートナーの「欲求言語」を理解することも、満足度の高い関係を築くための大切な要素なのです。

 だからこそ、その感覚を恥じたり、抑え込んだりする必要はありません。ふたりで「もっと気持ちよくなるにはどうすればいい?」と話し合える関係を築けたら、それはとても健全で、成熟したパートナーシップです。



【"心地よさ"から、ふたりの関係を立て直す】


 セックスレスになったからといって、愛が冷めたわけではありません。むしろ、「愛はあるのに触れ合えない」ことに苦しんでいるからこそ、そこには回復の余地があります。関係性の再構築において最も大切なのは、「性」そのものよりも、互いに対する「心地よさ」を取り戻すことなのです。

 まずは、お互いに心地よくいられる距離を探してみる。押し付けない、期待しすぎない関係性のなかで、少しずつ信頼を回復していく。その過程で、「この人と一緒にいると安心する」「この人に触れられると心地いい」という感覚を育んでいく。そうした土台があってこそ、性的な親密さも自然と戻ってくるものなのです。

 そして、性的なことをポジティブに話せる関係を目指していく。恥ずかしさや不安を乗り越えて、「私はこう感じる」「こうされると嬉しい」と素直に伝え合える関係。それはセックスだけでなく、日常生活のあらゆる場面で二人の絆を深めていくでしょう。

 "したくなる関係"は、自然に戻るものではなく、ふたりで一緒につくりなおしていくもの。時間がかかってもいい。無理なく、でもちゃんと向き合う。それこそが、セックスレスを乗り越えていくいちばん確かな道です。二人の関係が「愛情があるのに触れ合えない」状態から「愛情があるからこそ、触れ合いたい」という状態へと変化していくとき、そこには新しい形の親密さが生まれていくはずです。

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