『事件です!』
3日目。
この日も朝から雨が降り続いていた。
オフェーリアは朝食のあと自分の部屋に戻り、今日渡す予定のポーションを用意していた。
その内訳はポーションAと回復薬(魔力を使わずに素材をレシピ通りに調合したもの。ポーションに比べるとかなり効力は落ちるが致命傷でない傷などには効果を発揮する)を各一本ずつ、そして回復薬を作った時に残った搾かすを使った傷薬も付けておく。
「悪いな。
でも本当にいいのか?」
朝食の時に約束した時間通りに冒険者5人がオフェーリアの元を訪れている。
そのひとりひとりに布袋に入ったポーション他を渡していく。
「先日のSタイプは問題なく効いたわ。
だからAタイプの効果も問題ないと思う。
……回復薬はこちらでもあるでしょうから説明は要らないわね?
こっちの軟膏は軽い怪我ならよく効くから」
願わくば、オフェーリアが同行している間にこれらを使うようなことがないよう、思う。
その時、突然ドアが開いて例の少女マリーが駆け込んできた。
冒険者たちが来ていたので、うっかり施錠をしていなかったからだが彼女はテーブルの上に出されていたポーションに、正確にはそのきれいな瓶に興味を引かれ断りもなく手を出した。
「あっ!」
「おい!何をするんだ」
素早く動いたジニーの手をすり抜け、手にした瓶はマリーの手から離れて床に向かって落ちていく。
そしてガシャンとガラスの割れる音がして、床に液体が広がっていった。
「!!」
さすがに拙いと思ったのだろう。
マリーは逃げようともがいているが、ジニーががっちりと拘束して逃げようがない。
「離して!離してよー!」
喚き叫ぶマリーの声が聞こえたのか、2人組の商人が開いたままになっていたドアから顔を覗かせた。
それで一番に気づいたのは床に広がった液体のシミとそれが発する匂いだ。
「これは……ポーション?!」
彼らは目の前で起きたことを正確に把握した。