『内緒話?』
「なあ、あのポーション、個別に小売はしないのか?」
またまたどしゃ降りの雨の朝、朝食に降りてきたオフェーリアの耳許でジニーがそっと囁いた。
「それなんですけどね、バイショーのギルドに一定の量を寄付して、それを試供品として配ってもらおうと思っているんです。
……それが気に入れば販売量も増えるでしょうし、あの、こちらではポーションがあまり普及していないようなので」
「そうなんだ。
中大陸とは表向きの交易は途絶えていることになっているが、密かに密貿易は続いているようで少数ながら今でも流通はしている。
それと極々稀にポーションを作れる程度の魔力持ちが細々と販売しているくらいだな」
ここでオフェーリアは消音の魔法をかけた。
あまり練度が高くないので半径1mくらいの範囲だが。
「わかりました。
今、このテーブルにいる冒険者の皆さんと御者さんたちには試供品としてAポーションをお渡しします。
昨日の御者さんに使ったSは買ってもらうしかないですけど」
「試供品って、フェリアちゃん」
「どうせバイショーの町でも行うつもりだったから。
でもポーションがあるからって無茶しないでね」
そして違うテーブルからこちらを見ている、同じ乗り合い馬車に乗っている乗客たちと冒険者にちらりと視線を向ける。
「私はどうしてもあの人たちを信用することができないの。
だからあなたたちも気をつけて欲しい」
それは考えすぎだろうとブランデルグが笑っているが、オフェーリアの勘はよく当たる。




