『古傷』
「で?今日は一日部屋に篭って何をしていたんだ?」
この、ファントの疑問でオフェーリアの本来の職種が顕になった。
「採取してためていた薬草を乾燥させてたの。
これはポーションを調薬するときの主原料なので、できる時に纏めてやっておくのよ」
「ポーション?!
フェリアちゃんはポーションを作れるのか?」
「ええ、私薬師ですもの」
そう言えば言ってなかったなと、ぼんやりと思う。
そんなオフェーリアと違って、同じテーブルの冒険者たちの食いつきが凄い。
「ああ、そうだ。
中大陸で獣人さんたちが使用して問題なかったのですが、できれば効き目をこの目で見たいのです。誰か怪我とかしてません?」
陽西大陸にきてそれなりに販売しておいて今更だが治験者は何人いてもよい。
「それは古傷にも効くのか?」
「標準のポーションAでは無理ですが、ポーションSならある程度は可能ね。
一体どんな古傷ですか?」
今まで黙って聞いていた御者が縋るような目で見つめている。
「……右膝だ。
若い時に冒険者だった俺は魔獣の討伐依頼の時にヘマをして、冒険者を辞めざるを得なかった。
今更治ったところでもう冒険者に戻れないが、もしも……」
「わかったわ。じゃあ、これを飲んで」
御者の歩行にはよく気をつけないとわからない程度の違和感があった。
それなりのリハビリを経たようだが、膝の可動域は元に戻らなかったようだ。
オフェーリアがアイテムバッグから取り出した、紫のラベルが貼られた瓶が御者に渡された。
「お、おう。いいのか?」
「サンプルです。
さあ、ぐーッと飲んで!」
本来ポーションというものは不味いものと決まっている。
だがこのポーションは不思議な清涼感があった。
「さあ、どう?」




