『vs黒麒麟』
オフェーリアが様子見に放った爆炎は、黒麒麟には傷ひとつつけることができなかった。
「ふん、火属性の魔獣のようね。
では次はどうかしら?」
普通火属性といえば弱点は水である。
オフェーリアは水刃、いわゆるウォーターカッターを放って距離を取った。
「さっきよりは効いているようだけど……」
今日初めて血を流した黒麒麟を見てオークたちが歓声をあげている。
「でももうひとつのようね。
……これは手間取るかもしれない」
少し派手な爆発を伴う炎魔法でオークたちに距離を取らせ、反対に近づいたオフェーリアはここでいつもの戦法に切り替えることにした。
「血抜き」
流石の黒麒麟も動物である限り血液を失っては生きていけない。
断末魔の叫びを一声あげて倒れ伏した巨体を、オフェーリアは素早く異空間に収納した。
「これでもう大丈夫。
死亡は確認されたからね。
珍しいのが獲れてラッキーだったわ。
【飛行】」
久しぶりに殲滅魔法も使うことができて、オフェーリアは先ほどまでの不機嫌も吹き飛んでいる。
このままこの場を離れて馬車を追おうとして、足元にひざまづくオークたちを認識した。
「あら」
「め神さマ、たスけてくレテ、ありガとウ」
その中の一際大きなオークがたどたどしい古代語で礼を言ってきた。
オフェーリアは目を丸くして驚いている。
「あなたたち……オークじゃないの?」
「おレらは、おーく、デモちがウ」
「どういうこと?」
見た目はオークで間違いない。
だが本来オークとは知能が低く、たとえたどたどしくとも古代語を操るなどあり得ないのだ。




