『穏やかな夕食』
少し寒いのでオフェーリアは予備のゲルを取り出した。
これには家具などは備え付けていない。
ただのゲルだ。
そこに簡易の椅子と魔導コンロを出し、大鍋をかけた。
「今日はブラウンシチューよ。
お肉もお野菜も大ぶりにカットしてあってゴロゴロしてるの。
食べ応えはあると思うわ」
さらにボイルしたソーセージを皿に積み上げ、腹持ちの良い黒パンをカットした。
そしてメインのブラウンシチュー、肉はミノタウロスのものだが、特大の深皿にたっぷりとそそぐと2人に差し出した。
「ジニーさんはそれだけでは足りないだろうからお代わり自由ね。
助手君も好きなだけ食べて」
そしてミノタウロスの肉だが中大陸では高級肉の部類に入るが、ここではひょっとすると共食いになってしまうかもしれないので黙っておく。
「いただきます」
もう待ちきれなかったのだろう、助手君がスプーン片手に呟くと早速シチューを口にした。
「美味しい!美味しいです!!」
助手君は涙目で叫び、ジニーは無言でシチューをかき込んでいる。
そしてあっという間に皿を空にし、自ら鍋からシチューを掬い皿を満たし始めた。
「フェリアちゃん、これめちゃくちゃ美味いな。
……なあ、俺の嫁になるか?」
まさかの求婚にびっくりしたオフェーリアだったが真面目な顔で言い返した。
「そんな、料理目当てでプロポーズしないでくれる?」
「いや、すまん。
ちゃかしてるわけじゃないんだ。
フェリアちゃんは貴種だろう?
俺なんかが手の届く存在じゃないもんな」
「うふふ、気にしないで。
でもね、ちょっと嬉しかったのよ。
だってちゃんとしたプロポーズは初めてだったから」
そう言って力なく笑った。