『トラブル、その2』
その後、今夜宿を取る村にやって来た一行だが、ここでもトラブルに見舞われることになる。
「は?部屋数が足りない?」
代表で帳場(受付カウンター)に向かった御者の大声で、そのトラブルは皆に顕になった。
「真に、真に申し訳ありません。
本当なら今朝この村を出発するお客さんが具合が悪くて、一日出発を延ばされたのです。
いえ、病気とかではなくて少しお酒を過ごされただけで……」
どうやら最悪の案件ではなかったようだ。
もし病気なのなら感染することも考慮しなければならない。
「なので女の方でひと部屋にしていただければ」
「お断りします。
他人と同室なんて馬車で休んだ方がマシよ!
夕食もいらないのでわたしの分は無かった事にして下さい」
オフェーリアはさっさと踵を返し出て行ってしまう。
慌てて追いかけたのは当然のごとくジニーだ。
「おい待て! 待てったら!」
こう見えてオフェーリアは思ったよりも足が早い。
あっという間に駐馬車場に着いたオフェーリアは馬の世話をしている助手の男の子と鉢合わせした。
「フェリアさん、どうしたんですか?
何か忘れ物でも?」
「いいえ、今夜はここで泊まるから」
「はあ?」
乗り合い馬車では町や村の宿屋に泊まる場合、御者もしくはその助手が馬車に泊まり込み、番をすることになっている。
今夜は彼の当番のようで先に馬たちを厩に入れ、水と飼馬を与えなければならない。
「フェリアちゃん!
俺たちの部屋をひとつ空けるから考えなおしてくれ。
宿があるのに野宿なんてさせられない」
「ご心配なく?
私には専用のテント(ゲル)があるし結界も張れるわ。
……彼もいるようだし、大丈夫よ。
それよりも護衛の皆さんにはとれるときにはちゃんと休養をとって欲しいわね」
正論にグウの音も出せないジニーは納得するしかない。
だが彼もここで引き下がるわけにはいかない。
「じゃあ俺も付き合う!
連中と同室なんていびきなんかでゆっくり寝られないんだ、ここの方がよく寝れる」
「好きにすればいいわ。
でも、そうね。
あなたと助手君には夕食をご馳走してあげる」
ジニーがガッツポーズを繰り出した瞬間だった。




