『大都市』
旅立ってから8日目。
一行はこの旅で一番大きな町ウデンに到着した。
「ハズレも大きかったけど、この町はさらに大きいわね」
「ハズレは外層があったが住民が住んでいるのは内層の内側だけだった。だがここは壁の向こうはすべて町だからな」
このあたりにも詳しいジニーが説明してくれる。
「ハズレとは違って周辺に出没する魔獣はそれほど強い奴はいない。
だから畑を壁で囲む必要がないんだ。
だから外壁の中は目一杯人が住んでいる」
そんな話をしながら今、オフェーリアと冒険者たちは検問を待つ列に並んでいた。
さすがに大きな町だ。
町に入るもの全ての人に身分証の提示を求めているのだ。
「冒険者登録をしておいてよかったわ」
もしもっていなければ憲兵隊の詰所に直行だ。
現になかなかギルド証が見つからなかったワランはもう少しで詰所行きだった。
「フェリアさん、今日は指定の宿屋に泊まってもらって明日の朝7刻に停留所に来てもらえますか?
それとここから乗客が数人と護衛が増えますので……」
止まったままの馬車を助手に任せて、御者がやってきて明日の朝の説明を始めた。
「それならもう食事の販売は止めにしましょう。
私、新たに加わる人たちとの交流に自信がないので」
残念だがあれは完全にオフェーリアの好意で行われていたことだ。
そんなことを御者と話していたオフェーリアの向こうで象人ファントが涙目になっていた。
「常識的な量をお弁当として個人的に販売するのは嫌じゃないわ。
でもあまり開けっぴろげにするのはどうかと思うの」
昼の弁当くらいなら宿に頼んで作ってもらうこともある。
この季節なら、その日が野営だとわかっている場合、夕食の弁当も頼むことだってあるのだ。
そんな約束をしたオフェーリアと冒険者たちは、宿に向かったのだが今夜は乗客と護衛は別の宿屋に泊まるようだ。
昨夜はひとりを満喫し、都にも戻って冬眠明けのピピとも再会することができた。
どこか落ち着く場所ができたら連れてくることもできるだろう。
オフェーリアはその時が楽しみだった。
……翌朝、オフェーリアは十分余裕を持って乗り合い馬車の停留所に向かった。
その場にいたのは馴染みの御者と助手の2人だったのだが、オフェーリアは言い知れぬ不安を抑えきれなかった。