『宿屋での夕食』
忙しい時を過ごして宿に戻ってきたオフェーリアは間を置かず、夕食のために食堂に呼ばれた。
はっきり言って、直前まで大量のパンを見ていたためすでに胸焼けを起こしていて食欲はない。
隣のテーブルにいる冒険者たちにチラリと視線を移すと改めて食事に向き直った。
「……」
スプーンを取り上げてスープなのかシチューなのか判別できないものをすくうと口にする。
「美味しい……」
おそらく具である腸詰から出たのだろう出汁が効いて野菜の旨みと合わさって、素朴な味が食欲をそそる。
そのおかげで不自然に思われない程度に食事することができてホッとした。
「なあ、ちょっといいか?」
オフェーリアが食べ終わるのを見計らって声をかけてきたのはリーダーのジニーだ。
「はい」
思わず身構えてしまうオフェーリアだったが、ジニーは突然頭を下げてきた。その後ろには後4人の冒険者が続いて頭を下げていた。
「いくら腹が減っていたとはいえ、あんな浅ましいことをして申し訳なかった。
これで無かったことにできるとは思わないが、せめて代金を支払わせて欲しい」
そう言ってテーブルに置かれたのは銀貨20枚。
あの量としてはそこそこの値段だろう。
「確かに受けとりました。
それからお昼のことはそれほど気にしていないので、これで手打ちにしましょう」
まだ旅は始まったばかり、しこりを残すのはごめんだ。
「それと……時々でいいからまた昼飯を食わせて欲しい。
もちろん金は払う!」
本格的に賄いおばさんになってしまいそうだが、こうなったら自分ひとり食べるわけにはいかないだろう。
「わかりました。
どうせ道中は暇だし、きちんと対価をいただけるなら作ります」
一瞬ののち、男たちから歓声が上がる。
それほど嬉しいことなのかと、オフェーリアは呆れてしまった。




