『賄いおばさん?』
周りの男たちは寄越せとは言わない。
だがその視線はバスケットに向いており、誰かの腹の虫も聞こえてくる。
オフェーリアとしては必要以上に関わりたくないのだが、もうこうなったからには仕方ないのだろう。
「……食べる?」
ブランデルグの口から涎がポトリと落ちる。
そして目にも留まらぬ速さで手が出された。
「きゃ!」
オフェーリアが思わずバスケットを取り落とすと、途端に群がる男たち。
そして小ぶりなロールパンサンドを争うように口にするのを見て、オフェーリアは覚悟を決めた。
「しょうがないわね……」
作り置きしていたサンドイッチやロールサンドをありったけ出して、飲み物として紅茶を用意する。
それでも足りなそうだったが、今はこれで納得してもらうしかない。
これで明日から昼食当番が決まってしまったと悲観するオフェーリアだ。
「……食材の補給が必要ね。
今夜の宿のある村?にあればいいのだけど」
あっという間にバスケットのなかのものを平らげてしまった男たち、特に象人はまったく足りてない。むしろ虫を起こしてしまったようだ。
長い鼻がオフェーリアの前まで伸びてきて、それをゆらゆら揺らしながらおかわりを催促している。
でも無いものはしょうがない。
なのでこれでも食べておいてと出したのは、ナッツやレーズンがたっぷりと入ったフルーツケーキだ。
「もうこれ以上ないから。マジで怒るから」
そして自分は賄いおばさんではないと、強く主張した。




