『休憩』
街道のあちらこちらには馬車がすれ違えるように幅広になった場所があり、所によっては休憩や野営ができる場所があった。
そんな場所のひとつで馬車は止まり、今人馬が休憩している。
そこに水場がない場合に備えて馬車の荷台には水の入った樽が積まれていた。
まずは馬の世話だ。
御者とその助手が一頭一頭に水の入った桶を配り脚の様子などを見ている。
オフェーリアはひとり馬車の中で、昼食のお弁当として持ってきたロールパンサンドを頬張っていた。
「いい臭いだ、いい臭いがするぞ〜」
そこに顔を出したのは件の象男だ。
あれからずっと走っていたのだろうか、いささか疲れた様子だ。
「勝手に食事をさせていただいているわ。
ここにはどのくらい留まっているのかしら」
「それは馬次第だが、一刻ほどだろう。
それより……」
象男の後ろから返事をしたのはリーダーのジニーだ。
「フェリアちゃんは何を食べているのかな?」
そんなやり取りの間にも、護衛の冒険者たちが欠食児のように集まってくる。
その中でも今まで無口で大人しかった狼人のパンナが鼻をヒクつかせて、オフェーリアの持つパンをジッと見つめていた。
オフェーリアはとても居心地が悪い。
「あの〜皆さん、昼食は?」
「俺らはいつも朝夕の2回しか食わねぇ」
初めてパンナの声を聞いたオフェーリアは、アイテムバッグからバスケットを取り出し、その中に入っていたロールパンをひとつ差し出した。
「食べる?」
「いいのか?」
「うん」
おずおずと伸ばされた手にロールパンを渡すと一口でなくなってしまう。
そしてオフェーリアの周りにはパンナを含む5人の獣人が群がっていた。