『停留所』
オフェーリアが都での即位式を見届けてハズレの町に戻ってきた時には、もう雪は溶けかかっていて春はもうすぐそこに来ていた。
まずはギルドに行き、鑑定士との約束通りアイテムバッグを5個販売した。
所有者限定の付与魔法もつけていないのに、なんと1個につき金貨300枚、5個で1500枚というすごい値となった。
これでしばらくは路銀に困ることはないだろう。
「それと……ポーションもお願いしたいのだけど」
これも話が通っていたので、オフェーリアが出したポーション10本を1本金貨20枚、計金貨200枚、先ほどと合わせて金貨1700枚をわずかな時間で稼ぎ出したのだ。
そしてそれがハズレの町でオフェーリアの姿を見かけた最後だった。
もう春がすぐそこまでやってきているとはいえ、まだ野山は雪が残っていて、街道もなんとか馬車が通れるかどうか、といった具合だ。
そんななか、ギルドから出たオフェーリアは同じ広場に面した乗り合い馬車の停留所にやってきた。
その時は特別どこかに行こうというつもりはなかったが、忙しなく行き来している男たちに興味を惹かれたオフェーリアは停留所を覗き込んでみた。
彼らが荷物を積み込んでいるのはオフェーリアが以前城下町まで乗った乗り合い馬車ではなく、もっと大型の馬車である。
その馬車は半分が荷物を積むようになっているようで、乗客は前方の座席に座るようだ。
「お?お客さんかい?」
「あの、この馬車はどこにいくのですか?」
「こいつは明日の朝一に出発する、商業都市マルクメンに向かうこの春最初の便だ。
途中、5ヶ所の町や村に寄って20日後に到着予定なんだ」
地名を言われてもちんぷんかんぷんな様子を察したのだろう、男はオフェーリアに来るように言うと停留所の事務所の中に入っていった。
「これが大陸北部の地図だ」
壁に貼られた大きな地図の前に案内される。
「今いるハズレの町がこの端っこ、わかるな?」
オフェーリアはふむふむと頷いた。
「商業都市はここだ」
男の人差し指が指し示したのはここから南西に向かった町だ。
地図の上からでもそれなりの距離があるのがわかる。
そしてその間にはいくつかの点があってそれが町や村なのだと理解した。
「えーっと、あの馬車に今からでも乗ることはできますか?」
「んんーっ?
今のところ荷物だけだから問題ないが、出発は明朝だぞ?」
「わかりました。
乗車賃はおいくらですか?」
思い立ったが吉日である。
オフェーリアは次の町に行くことになった。




