『姉』
オフェーリアと会うことによってさらに哀惜を深めることを危惧した側近は、マザーとオフェーリアが合うことを許可しなかった。
ただ神殿入りした元マザーが外部と接触できないわけではないので後日接見を約束されていた。
「結局新しいマザーはクレストラ様に決まったのね」
クレストラ女史はマザーのかなり初期の子供であって、オフェーリアとは父親の違う姉妹にあたる。
オフェーリアは彼女とはほとんど交流はないが、それはお互いを避けていたわけではなく、オフェーリアが誕生する前に彼女が学問の道に進んで大学院での研究に没頭していたからだ。
この度の即位にも学究を続けることを条件としていて、側近はこれをのんだのだ。
「ダイアナ〜」
「あら、フェリアじゃないの」
アトリエ兼店舗で出迎えてくれたダイアナはいつも通りだった。
「この度は残念でしたと言うべきなのか、良かったねと言うべきか」
「ぜひ『良かったね』でお願いしたいわね。
……本当、ゴタゴタして落ち着かなかったわ。
私、あと1000年くらいはこのままの生活でいたいの」
1000年とは、人間には想像もつかない年月だろう。だが魔法族であるオフェーリアたちにとってそれは通常の感覚だ。
「あの、ダイアナ。
私、今回初めてマザーとの事を知ったの」
「そう……
いつかは知ることだったけど、少し急だったかもしれないわね。
では私とのことも聞いた?」
「……はい、お姉さま」
「うふふ、周りがお姉さまだらけになってしまってよ?
手のかかる妹さん、これからも可愛がらせてね」




