『真実』
「今行ったら、きっと荒れてるわよね」
「さあ、どうかな」
ダイアナが次期マザー候補だというのは知られた話だ。
だが彼女は以前から、はっきり言って嫌がっていて話し合いの最中だったはずだ。
「大人の世界は大変ね」
「おまえだって無関係じゃないと思うがな、“オフェーリア”」
意味ありげに笑われて気持ちが悪い。
「どういうこと?」
オフェーリアは自分が決して出来の良い方だとは思っていない。
それなのになぜそんな思わせぶりなことを言うのか意味がわからない。
「今のマザーは魔法族史上最強だと言われている。
そんなマザーの、おまえだって直系だろ?」
「え?そんなの知らない」
あまりの衝撃に頭がついていかない。
たしかに魔法族は子供が少なくて、生まれた子供は皆で面倒を見る。
それが慣習でいつしか実の両親という続柄もさほど重要でなくなっていった。
子供はすべてマザーの子供。
その中にはもちろん実子も含まれる。
「誰も教えていなかったんだな。
マザーの子ではフェリアが一番若い。
ダイアナもマザーの実子だが、おそらく父親が違うと思う」
「マザー……結婚してたんだ」
「そうだな、今の伴侶、フェリアの父親が3人目だな」
思いもよらない事実を知って、オフェーリアは動揺を隠せない。
そのまま彼女は踵を返し、転移してしまった。
毒の森の奥深く、雪に埋れつつあるウッドハウスに戻ってきたオフェーリアは、今しがた知った真実を受け止められずにいた。




