『魔法族の女王』
半月ほどゆっくりと過ごしたオフェーリアは久しぶりに都に行って、その話を聞いてびっくりしていた。
「マザーが退位?!それってマジ?」
「マジじゃなきゃあ、こんなに騒ぎになってないだろう?」
転移してきてすぐ、都がなんとなく落ち着かない雰囲気で、とりあえず駆け込んだ魔導具屋の教官から聞かされた話はまさに青天の霹靂であった。
「こんなに急にどうして……
先だってお会いした時はとてもお元気そうだったのに」
「健康には問題ないぞ。
マザーは神殿に入られるのだ」
「神殿……」
オフェーリアたち魔法族に人間社会のような宗教はない。
そのかわり歴代のマザーやそれに準ずる存在が『神殿』と呼ばれる場所で余生を過ごすとともに都を護るものとなるのだ。
「マザーはまだお若いわ。
『神殿』なんて早すぎる……」
彼女の本当の年齢は誰も知らない。
だが少なくとも見かけは熟女の域には入っていない。
「これは噂だが……『神殿』の最高位、先代か先々代のマザーがお隠れになったのではないか、という話だ」
「そんな……」
魔法族といっても不死ではない。
高位の魔法族は数千年の時を生きるというが、今までオフェーリアの周りでそのような存在というのはマザー以外いなかった。
「もう退位は決定したのだ。
今、揉めているのは次代の事だ。
第一候補が辞退して決まらんのだ」
「第一候補って、ひょっとしてダイアナ?」
「その通り。
だがあいつは自分がまだ若年であることから固辞しておる。が、儂は自由に製作が出来なくなるからではないかと思っておる」
多分それは間違っていないだろう。
それにダイアナは堅苦しいことを嫌う。