『真冬の食事会』
冒険者ギルドには冒険者パーティーがミーティングなどを行うためにテーブルと椅子がいくつか設置されている。
オフェーリアは鑑定士とともにそこに座り、空腹の鑑定士のためにシチューだけでなくパンやウインナーなどを並べていた。
「こちらの料理とは少し味が違うかもしれないけど、それほど気にならないと思うわ。
……シチューは熱い間に召し上がって?」
ここ2日ほどの食事がパンとエールだけだった鑑定士は、久しぶりの温かい食事に夢中だ。
ある程度食べて落ち着くまでオフェーリアも声をかけずに見守ることにする。
何と彼はその歳に見合わず、シチューとパンをおかわりするほどでオフェーリアを驚かせた。
「ああ……こんな美味い飯を食べたのはいつ以来だろう」
食後のお茶を飲んで独りごちる鑑定士は本当に幸せそうに微笑んだ。
「お爺さん、冬籠りの食料はどうしたの?
まさか料理出来ないから用意してないなんてこと、ないわよね?」
「いくら儂でもそこまでじゃないぞ。
エールや林檎は樽で用意して保管庫代わりの室に入れてあるし、干し肉もある。
ただパンなんかは何日かに一度宿屋の食堂で譲ってもらうんじゃ。
その時に料理なんかも作ってもらったりする」
典型的なダメ男の生活を送っているような爺は、それでも今まで生きてきたのだ。
「中大陸でも冬籠りはあったけど皆もっと真剣に準備をしていたわよ?
こちらの方が寒さが厳しいようだし、もし大雪で埋まっちゃったらどうするわけ?」
「何年か前にそれに近いことがあったが酒場の酒で乗り切った。
そんな時のために酒はそのままにしてあるんじゃ。
それに埋まったら門の兵士が助けに来てくれるわ」
何とも言えない顔をしていたオフェーリアに、爺がズバッと切り込んでできた。
「で、お嬢さんも色々秘密がありそうなんだが?」
「ええ、そうね。それがなにか?」
オフェーリアは笑顔で切り返す。




