『披露』
「尻尾……」
「おう、俺は狼の獣人だからな。
普段は尻尾だけ出てるんだ。
でも変化はできるんだぜ」
廊下をずんずんと進む男に抱えられたオフェーリアは、とんでもない事を聞いた気がする。
「そうだ、今更だが俺はドナヒュって言うんだ。
この支所の副ギルド長をやっている」
どうしてそんな役職持ちがカウンターにいるのか、以前もどこかのギルドで同じようなことがあった。
「さて!フェリアちゃん、あそこで狩った魔獣を出してくれ」
巨大な解体台の横で降ろされたフェリアは、目をキラキラさせた男、ドナヒュに迫られてタジタジだ。
オフェーリアはコホンとひとつ咳払いをするとウエストバッグから手袋を取り出してそれをはめる。
そのいささか勿体ぶった仕草にドナヒュは焦れたが、それでも我慢してオフェーリアの一挙手一投足を見つめていた。
「!!」
手袋をはめた手が空間に消え、次の瞬間引っ張り出されたのは、3mはある黄色の地色に銅色の模様の蛇である。
「うおっ!!
ゲルトセルバコッパースネークじゃないか!
こいつは何と言うか……
おい、誰か手袋持ってこい!」
さすが近くに毒の森がある町の住人である。
いくら興奮していても素手で触れようとはしない。
「手頃なところでこんなのでどうでしょう?」
この蛇ならかなりの数確保しているので、1匹や2匹譲っても問題ない。
「うおー、これはいい状態だ」
この解体場にいた男が慌てて持ってきた、オフェーリアの頭ほどある手袋を素早くはめて、ドナヒュは慎重に蛇を取り上げた。
「でしょう?
傷ひとつつけてないし、体液も損なってないわよ」
「そいつは凄え……
なあ、もちろん売ってくれるんだな?」
「よろしくお願いします」




