『初めての町に向かって』
【毒】の森の採取に夢中になったオフェーリアは、この西宝大陸に到着して2ヶ月近く経つのにまだ同じ場所にいた。
正確には毎日、転移の扉から都のウッドハウスに帰っているのだが、そのアトリエで解析してすでに一種類だけだが新種の毒薬とその解毒薬を調薬している。
そして今、その毒を元に新たなポーションの開発に勤しんでいた。
「毒と薬は紙一重、ってね。
特にこのピンクの葉(正式名称はまだない。いやこの大陸ではあるのかもしれないがオフェーリアはまだ誰とも接触していないのでわからない)は作りやすかったわ。
次は紫の葉を採取するのだけど……」
オフェーリアがピンクの葉に夢中になっている間に、季節が進んだようだ。
今、上空からはちらほらと雪が舞っている。
「そう……もうそんな時期なのね」
オフェーリアはそろそろこの場を離れて人里に移動することを考えていた。
だがこの森が冬を迎えるにあたってその様子を見たいと思ってしまう。
ゲルの中に入ったオフェーリアはソファーのクッションの間で身体を丸めているピピを抱き上げた。
「そっか、ピピも寒いのね」
こんな森の中なのでドカ雪が積もるとは思えないが、今のうちに移動する決心をした。
人の住む場所は【飛行】で樹上にいる時にあたりをつけていた。
「こういうときに初めての場所は不便なのよね」
結界を解き、ゲルをしまってピピをローブの中に入れる。
専用の内ポケットに収まったピピは丸くなって大人しくしている。
オフェーリアは手製のカイロを同じポケットにそっと忍ばせてやった。
そして一気に高度をとり、先日朧げながら見た町を囲む城壁に向かうのだった。




