『状況確認』
「お待たせしました」
オフェーリアが戻ってくることによって、騎士団長に纏わりついていた嫌な空気が霧散した。
そして彼女の姿を見て目を見開く。
てっきり外出用のドレスに着替えてくるかと思いきや、何と探索用のチュニックとレギンス、ブーツといった装いで腕にはローブを掛けている。
「フェリア殿……」
「ぜひ私も捜索に参加させて下さい。
知らない仲ではないですし、何よりも心配でいてもたってもいられませんわ」
騎士団長は感激して涙が溢れてくる。
「では参りましょう」
オフェーリアが騎士団長とともに、ダンジョン前ギルドの側に設けられた仮設の本部である天幕にやって来ていた。
そこにはちらほら顔を見知った面子もいる。
「皆様、お待たせ致しました」
「おお、フェリア殿、わざわざありがとうございます」
立ち上がって出迎えたのはエクトル王子の副官を務めている男だ。
「お話は聞きました。
はぁ……どうして殿下は。
いえ、そんな事を言っている場合ではないですね。
今はどのような状況ですか?」
オフェーリアの質問に副官は時系列に沿って答えていく。
「私がダンジョンに居たのは……ここからこれくらいでしょうか」
「はい、それは台帳で確認させていただいています。
フェリア殿は最近発見された横道にいらっしゃったとか」
「はい、正確には横道の奥の洞穴で希少な苔などを採取していました」
「あそこはずいぶんと危険な場所だと聞いていますが」
「いえ、もうクロコダイラワニンは討伐しましたし卵も回収しました。
ただ苔と言ってもただの苔ではありませんし、採取の方法を知らない者にとっては危険かもしれませんね」
オフェーリアが昨日アリバイ用に用意した食虫苔は毒を持ち、何よりも攻撃してくる。
数を採るためにはそれなりの技術と時間を要するのだ。
「では殿下はダンジョン内を通常の進路でフェリア殿を追われたわけですね」
「おそらくそうでしょう。
昨日潜っていた、他の冒険者に目撃者はいないのですか?」
自分が探査をかけて、誰もいない事を確認しての凶行である。
フェリアとしては白々しい事この上ないが、エクトル王子を捜索している側としては真剣だ。
だが、凶報はもたらされた。