『求婚』
王宮からは非公式にだがこの度の婚姻は行わないこと、すなわち婚約者の選定も無しになった。
オフェーリアは生活の拠点を魔法族の都に移すことにし、東亜大陸には採取のための拠点として屋敷の一室を確保することにした。
「フェリア様、本当によろしいのですか?」
オフェーリアは屋敷の管理をドーソンに任せることにした。
これは実質的な譲渡であり、女官出身のアメリアたちも立ち退かなくてもよいようにした。
「どうせ滅多に来ないし?
私の為に王宮の住居を失ったのだもの、どうせ空いているのだから自由にしてくれればいいわ」
彼女らは新たな仕事を見つけなければならないが、とりあえず住居に関しては悩まなくて済んだわけだ。
家具等もそのままにしておくので、限られた私物のみ持って転移するため、オフェーリアに引越しの準備はない。
なので今日も優雅にお茶の時間を楽しんでいたところ、先ぶれもなく来客があった。
「……ようこそいらっしゃいませ。
お久しぶりですね。
無事のお帰り、ようございました」
目の前で偉そうに座っているのは、遠征に出ていた第四王子エクトルその人だ。
「あなたと我が国との縁が白紙に戻ったと聞いた。
その上で改めて求婚したい。
フェリア嬢、どうか私の妃になっていただけないだろうか」
オフェーリアも彼が黙っているとは思っていなかったが、まさかの求婚!
ルバングル王国とはすでに話がついているので、今回のこれは彼の独断であろうが、ややこしくなるだけだ。
「殿下……
私は以前にも婚約破棄されております。
なのに今回も少々変則的ですがこのようなことになりまして、はっきり申し上げますともう懲り懲りなのですよ。
なのでしばらくの間は隠遁したいと思っています。
殿下のお気持ちは嬉しいのですが、申し訳ございません」
にっこりと笑んだオフェーリアはバッサリと拒否した。




