『魔力庫とは』
「結論から申しますが、私が思うところ仮に私とこちらの国の男性との間に子供ができても、その子が魔法を使える可能性はかなり低いと考えています」
「なっ、なぜですか!?」
興奮気味に問い返したのはサバタインだ。
「詳細をお話しする前にこちらをご覧ください」
オフェーリアが異空間から取り出したのはかなり大きな巻紙だ。
そのテーブルの上に広げられた絵図をみて、3人は揃って息を呑んだ。
「これは私の出身地である大陸の、魔法族ではないヒトの人体解剖図です。
よ〜くご覧になって下さい」
そう言ってオフェーリアが一歩下がると、ずいっと近づいた3人が、あるものは懐から片眼鏡を出し、あるものは鞄からルーペを出した。
そして絵図に顔が付くほど近づいて観察を始めた。
最初、彼らは自分たちと何が違うかわからなかった。
“それ”に最初に気づいたのは大学院で教鞭をとっているサバタインだった。
「これは……一体何だ?」
何かを見つけた様子のサバタインにあとの2人は場所を譲り、彼の後ろからその様子を見守った。
サバタインは絵図を手に取ってじっくりと見つめている。
そして何かを指でなぞり始めた。
「あら、気づきましたか?」
案外時間がかかったが、血管に添うように張り巡らされた魔力を全身に巡らせる管を見つけたようだ。
そしてそれをなぞって、魔力庫とも言うべき器官に近づいていた。
「フェリア様、これはひょっとして……」
「そう、皆様にはないものですわね。
でもこれは絵図にするために便宜上描かれたもので、実際には視覚化されないのです。
なので例えば血管が傷つけられたとしてもこの管が切断されてしまうとかはありません。
そして鳩尾のあたりにあるこれが、吸収した魔素を溜めておく器官です」
3人の医師は戸惑いながら顔を見合わせている。
「そう、これこそが私が最初にお話しした理由です」




