『ダイアナ様』
前回会った時からほんの数日しか経っていないのに、大袈裟な仕草である。
だがダイアナの怒りと心配は本物で、チリチリと魔力が漏れてきていた。
「詳細はすべて視ていたから知っているわ。
向こうには記録装置もあるから言い逃れはできなくてよ。
陛下(マザーのことを対外的にこう呼ぶ)が更地にしてくればよいと仰るほどご立腹でね、もう会見を行うつもりもないようよ。
このまま一緒に帰りましょう」
「そうですねぇ……
ここのダンジョンは希少な素材が多く採取できるのですよ。
なので更地は困りますわ」
「でも私はあなたのことが心配なのよ。
こんなところに置いて帰れないわ」
「こちらには誼を通じた友もおりますし、私を慕ってくれる使用人もいます。
それにペットのピピもいますので、まずは我が家へ帰りたいと思います」
ダイアナは一刻も早く都に帰りたかったのだが、ここはオフェーリアに付き合うことにする。
「かわいい仔鰐だそうね。
会うのが楽しみだわ」
彼女にとってルバングル王国の人間は仔鰐以下であるようだ。
「それになんの意見もなしに帰国するのは悪手であると思います。
せめて今回のことの弁解くらい聞いて差し上げようではありませんか。
それと私からも一言あります」
「一言ねぇ」
ダイアナは関心なさそうに周りを見た。
その時さりげなく鑑定してみると、なるほどオフェーリアが言う通り、魔力を作るのはもちろん溜めておくための器官がない。
「これはフェリアの言う通りかもしれないわね。
……こんなのじゃ、尚更ここにいる理由はないでしょう?」
ダイアナ様は連れて帰る気満々である。




