『中ボス?』
あれから何度か、遠くからの地響きと揺れが続き、そして静かになった。
会場に集まっていた生徒たちはあるものは呆けたようにこの場にとどまり、またあるものは会場をあとにして屋敷に帰っていた。
「ダイアナ様、無作為に破壊して回っている訳ではないと思うのだけど……それでもかなりの被害が出ていそう」
「フェリア様っ」
最初のショックから立ち直ったタマラが、指示を出すために侍女を呼びに行かせた。
だが、取り巻きたちはそのままだ。
「う〜ん、ダイアナ様、今回の動きが速すぎます。
先日お会いしたときにこちらの情報はお渡ししていないのに、鮮やかすぎますわ」
これはマザーとその側近が、早くからルバングル王国の情報、主に貴族家の領地の場所などの情報を得ていたからに他ならない。
「誤爆はないと思いますが、多少の誤差はあるかもですわね」
最初の攻撃はかなり近かった。
あれはおそらく愚者のどちらかの、いやフルーラの屋敷を狙ったものだろう。
……周辺の屋敷も無事では済まないはずだ。
「どうやらおさまったようですわ。
タマラ様、皆様、お家に戻りませんか?
……もしお家に被害が及んでいたら、私の屋敷においでになって下さい」
「そんな不手際をこの私がするはずないでしょう!」
突然響きわたる、聞き慣れぬ声。
いや、オフェーリアにとっては子供の頃から馴染んでいた声だ。
「ダイアナ様!」
外のテラスに続く、ガラス扉の残骸を蹴散らして現れたのは、真っ赤なドレスを身につけた妙齢の貴婦人、それもエルフだ。
彼女がオフェーリアと同族なのはひと目見ただけで判断できる。
「フェリア、私の愛しい子!」
一気に近づいてきたダイアナがオフェーリアを抱きしめた。




