『怒り』
舞踏会会場にいた男女それぞれがゾッとする瞬間を味わって、愚者たちへの仕置きが済み、これでオフェーリアの気も済んだかと思われたとき、凄まじい轟音と揺れが襲い、そして衝撃波によって割れたガラスが降り注いだ。
「きゃー!?」
「うわーっ!」
この場にいるほとんどのものがパニックを起こし、すでに外に逃げ出したものもいる。
オフェーリアは、すぐにガラスの吹き飛んだ窓際に行って外を窺っていた。
「思ったより早かったわね。
……そこに転がっているなんとかいう女子、よかったわね、あなたが怒らせた方がわざわざいらしたようよ」
「フェリア様?」
あまりにも目まぐるしい展開についていけないタマラたちが、それでも情報を得ようと声をかけてきた。
実際彼女たちも不安なのだ。
先ほどの衝撃と轟音の正体に想像もつけないでいるのだ。
「ダイアナ様とおっしゃる、次次期の女王候補の方で、私の師匠であり保護者である方なの。
そしてなによりもファッションに造詣が深くて、今回の私の装いは最高傑作だと仰っていたの。
……その作品にワインをかけた愚者は、楽に死ねるとは思わないことね」
「ひぃ」
フルーラが白目を剥いて気絶した。
「あの音はおそらく、広範囲殲滅魔法の【メテオストライク】だと思うわ。
私も使用されたのを見るのは初めてだけど、直撃した場所には巨大なクレーターができて木の一本、蟻の子一匹残らないと聞いているわ。
困ったわね……ダイアナ様、侵略だと思われたらどうしましょう」
もしこれが侵略であれば、このルバングル王国は呆気なく蹂躙されるだろう。
ダイアナはオフェーリアほど温厚ではない。
魔法族を侮辱したこの国を決して許さないだろう。