『愚者の成れの果て』
顔を血塗れにしたフルーラが、ようやくオフェーリアから解放され少しでもこの場から離れようと這って移動しようとしているとき、次の獲物に照準を変えたオフェーリアはネペナーゼの元にやってきた。
「いい加減に起きてはいかが?」
オフェーリアのハイヒールが柔らかな内腿を踏んだ。
その痛みに意識を取り戻し悲鳴をあげたネペナーゼだが、先ほどの壁への激突で折れた肩甲骨と肋骨の痛みに身動きが取れない。
「お……まえ、どういうつもりだ?
こんなことをして、タダでは済まんぞ」
「あらあら、まだそんな口がきけるのね。
うふふ、大丈夫ですのよ、私、陛下から【斬り捨て御免】の権利をいただいているの。
こんな公衆の面前でいわれの無い辱めを受けたのですもの、十分理由になると思わなくて?
それに私はまだあなたの家とは婚約の契約を結んでおりませんのよ」
ネペナーゼの勝手な思い込みによる暴言は想像以上にこの国に不利益をもたらすだろう。
「それなのに一方的な婚約破棄宣言なんて、私傷つきましたわ」
内腿を抉っていたオフェーリアのヒールが微妙な場所に向かって移動している。
その意図に気づいたネペナーゼは小さく呻いて逃れようとするが、身体強化されたオフェーリアに踏まれては動けるものではない。
「なのであなたも“痛い目”にあって下さいませね」
そのあとの絹を裂くような悲鳴を聞いた男性陣は皆、顔色を悪くして冷や汗をかいている。
「まあ、おかわいそう……
これであなたは廃嫡ですわね」
かけらほどもかわいそうと思っていないオフェーリアだった。




