『初見』
舞踏会自体、オフェーリアにとって初めてではない。
だが今回のように自身が積極的に参加するのは初めてだった。
それがたとえ学院の学生がメインのものでも、貴族社会の縮図のようなものなのだ。
いささか居心地は悪いが、それなりに楽しんでいた。
そんななかオフェーリアは、突然現れたひとりの男子生徒に声をかけられた。
……それはとても丁寧とは言えないもので。
「おい、おまえ!」
オフェーリアが会場の壁際に置かれた椅子に座って、同じように座っているタマラたちと談笑していたところ、1組の男女が目の前に立ち罵倒とも思えるような言葉遣いでの声かけで、そこにいたオフェーリアと令嬢たちは唖然として相手を見てしまっていた。
「ねぇ、あの方……」
いち早く立ち直ったのは取り巻き令嬢たちである。
学院内のゴシップに詳しい彼女らは、このカップルが最近学院で話題になっている2人であるとすぐに気づき、囁き始める。
オフェーリアはタマラに「誰?」と聞いていた。
「ええと、殿方の方はカレメイン公爵家のネペナーゼ様です。
お連れの方は存じ上げません」
タマラほどの高位貴族の令嬢は、自身に関わりのないゴシップにはとんと疎い。
しかしオフェーリアは今の名前に心当たりがあった。
「あら?、ひょっとして……」
初めてまともに男子生徒を見たオフェーリアは、彼が自分の婚約者候補(第4王子が首を突っ込んでくるまでは伴侶候補)であると認識した。
だが現在はただの婚約者候補のはずだ。
その割には偉そうだが、この後信じられないことを言い出すのだった。




