『支度』
ボディスとスカートの一番内側はアラクネ絹糸を使ったタフタ。
それに極薄のシフォンと精密な織のレースを重ねていく。
もう仮縫いは済んでいて、あとはドレスを完成させるだけだ。
ダイアナは縫い糸に魔力を纏わせて本縫いに入った。
舞踏会当日、その日は普段の授業はなく、午後から開始するため、女生徒は午前中いっぱい支度にかけることができる。
だが、オフェーリアの支度を楽しみにしていたドーソンたちは肩透かしをくってしまった。
「支度はアトリエでします。
入浴だけこちらでお願いしますわ」
本当はすべて向こうで行いたいが、そんなことをすれば彼女らは拗ねてしまう。
オフェーリアは他人に身体を触られることを好まないが、今回はしょうがない。
キラキラと瞳を輝かせるアマリアたちに身を預け、香油でのマッサージを受け続けた。
「ダイアナ、お待たせしました」
すっかり気疲れしたオフェーリアがダイアナのアトリエに行くと、準備万端整えたダイアナが鏡台の前で待ち構えていた。
「いいえ、時間通りよ。
ではヘアセットから始めましょうか」
ダイアナは髪結いから着付けまで、すべてをひとつの作品と考える。
なので丹念にブラッシングされた金色の髪を器用に結い上げていった。
「今回の特徴はこの立ち上がったクィーンカラーよ。
なのであまり凝った髪型にはしないわ」
艶のでた髪を頭頂部の後ろに少し膨らませて纏め、一房だけ残した髪を熱したコテでロール状に巻き、肩から胸に向かって垂らした。
「さあ、次はドレスよ!
今回は会心の出来だわ」




