『宰相との会見』
本日、オフェーリアは王宮に参内しているのだが、どうやら思っていたのとは違うようだ。
案内されたのは謁見の間ではなく、宰相の執務室に付属する応接室であった。
「ようこそおいでくださいました。
わざわざお呼びたてして申し訳ございません。
どうぞお掛け下さい」
やたらていねいな宰相に気持ちが悪いが、おそらくこれからのことを説明するのだろう。
オフェーリアは勧められるままに腰を下ろした。
ここで女官が紅茶を出し、文官とともに退出していく。
どうやら込み入った話のようだ。
「まずはフェリア様、このような中途半端な状態のままで申し訳ない」
宰相は座ったままだったがオフェーリアに頭を下げた。
その行為にびっくりしてしまったオフェーリアはとっさに言葉が出てこなかった。
「……お心遣いありがとうございます。
私は謝罪よりも現在の状況を知りとうございます」
「ふむ……聡明だとは聞き及んでおりましたが、聞きしに勝る才媛のようだ。
実は今日はその“状況”の説明のためにお呼びしました」
宰相の話はこうだ。
まず、宰相はどちらかと言えば公爵家側についているようだ。
これは私利私欲からではなく、本来の筋を通しているに過ぎない。
この場で公爵家の名を言わないのは、これが公式の会見であって、今のところ不確定な縁組が取り消しになってその名を貶めることのないよう配慮しているのだ。
「フェリア様がどれほどご存知かわかりませんが、第4王子エクトル殿下からの横槍で、この儀は混乱しております。
陛下も、珍しいエクトル殿下の懇願を無下にすることができずに、そして公爵家としては引く気がない。
それに殿下の遠征が加わって、はっきり言わせていただければ混乱しておるのです」
おそらくわかりやすいように掻い摘んでの説明なのだろう。
だが一歩もひかない公爵家と第4王子。
「暫し、時間が必要です。
フェリア様にはまことに申し訳なく、このソムスル何度でも頭を下げさせていただきます」
自尊心に目を瞑れば、頭を下げるのはタダである。




