『王宮からの手紙』
今日は学院に行って気疲れして帰ってきたオフェーリアはアトリエで薬学全書を読みながら、傍らの籠の中で眠っているピピの姿を見ていた。
この仔鰐は賢くて、オフェーリアの留守の間でも大人しくしているという。
普段はアトリエにいるがたまに自室に連れて行ってもアメリアたちを脅かすことなく、最近はマスコット化さえしているようだ。
「食事は基本肉食だけど、最近は生肉に拘らなくなって助かるわ。
オートマタたちとも上手くやってくれていてこれなら室内でも十分生活できそうね」
鼻面を撫でてやると気持ちよさそうに伸びをした。
「フェリア様、王宮から文が参っております」
僅かに足を引き摺る執事は、第3騎士団団長から推薦された元騎士である。
名はサンドロ。寡黙だが有能であった。
「ありがとう」
トレイに乗せられ差し出された封筒を受け取り、ペーパーナイフで封を開ける。
王宮で使われている封筒と便箋で、中身も有りがちのものだった。
「単なる呼び出し状よ。
差出人は……宰相さんのようね」
オフェーリアは便箋を摘んでヒラヒラさせた。
決して褒められた仕草ではないが、今ここに作法に煩いドーソンはいない。
「そろそろ何とかしていただかないと、帰りたくなってしまうわ」
3日と空けず転移で戻っているのだが。
「アマリア、参内の衣装は任せます」
呼び出しの日は3日後だ。
だがその前に都に戻って、マザーとの意識のすり合わせをしなければならない。
それほど今回の参内は危うさを含んでいる。
「許可さえいただければ、もうはっきり言った方がよいのかもね」




