『恩人』
「フェリア様ご機嫌よう。
編入早々お休みでしたので心配いたしましたわ」
タマラ嬢、本当に心配していたのかそうでないのかよくわからないもの言いである。
「ありがとうございます。
余計な心配をさせてしまって申し訳ございません。
実は私、元々薬師を営んでおりまして、今回は納期の近い品がございましたのでそちらの方にかかっておりましたの」
「まあ!
まだ学生ですのに素晴らしいですわ!」
タマラをはじめ取り巻きの令嬢たちのオフェーリアを見る目が熱い。
尊敬と憧れの入り混じったそれにオフェーリアはたじろいでしまう。
「なのでこれからも度々お休みさせていただくと思いますの」
周りの令嬢たちはオフェーリアの言葉に熱心に頷いていた。
「あの、フェリア様は噂のポーションなどをお作りになるのですか?」
タマラ嬢の取り巻きの中で最も目立たないと言って過言ではない、貴族令嬢としては地味な部類に入る少女が声を上げた。
「ええ、ポーションは魔力を注ぎ込んで調薬するもので、元々それを作る薬師は少ないのです」
「では!では先日、騎士団で重傷者が出たとき、ポーションを提供してくださった薬師様と言うのはフェリア様のことだったのですか?!」
「ええ、そんなこともありましたね」
オフェーリアはまだ状況が読めないでいた。
「ありがとうございます、ありがとうございます……」
令嬢は床に座り込んで泣き始めた。
「あの騎士は私の兄です。
後で、瀕死の重体だったとお聞きして……フェリア様のポーションがなければ助からなかったと……」
嗚咽で言葉が続かず、取り巻き仲間に支えられて席に戻っていく。
それでもオフェーリアに向かって何度も何度も頭を下げていた。




