『高等貴族学院』
編入試験も無事終わり入学を許可されたオフェーリアは、出来上がってきた制服に身を包んで学院に向かった。
馬車は王宮の厩務舎と正式に賃貸契約を結び、厩務員を兼ねた御者と共に屋敷内の厩舎に収まって学院に送迎してくれることになった。
学院には元女官のアメリアが同行して学生生活を補佐してくれることになった。
オフェーリアは3学年の2組に編入されることになる。
「このような時期に編入生?
珍しいこともあるものですね」
生徒会の役員をしている、オルダイン侯爵令嬢タマラに取り巻きの女生徒が話しかけた。
生徒会経由でいち早く情報を得ていた彼女はそれを話し始めた。
「今回いらっしゃるのは別の大陸の方だそうよ。
我が国には婚姻のためにいらしたそうなのだけど、輿入れの前の教育のために編入されるそうですの。
皆様、慣れない環境に1人きりで放り込まれた方が戸惑われないよう、私たちがお世話致しましょう」
「わかりましたわ、タマラ様。
でもどのような方なのでしょうね」
彼女らは少女らしい好奇心で盛り上がっていた。
「はじめまして、フェリアと申します」
一限目の授業の前、担当の教師と担任の教師が編入生であるフェリアを紹介し、フェリアは優雅なカーテシーで挨拶した。
しかしそのクラスの皆は挨拶の前、フェリアが教室に入ってきた時からすでに言葉がない。
「……精霊?」
「まさか、本当にいたのか」
誰かがそう呟くと、この声は次第に大きくなっていった。
無理もない。
この大陸には他国に流れてきた魔法族との混血の人間が数名いるだけだ。
オフェーリアのように“エルフ”の姿形を持ったものは他にはいない。




