『編入へ』
「できれば断りたいのだけど……
こうして話を持ってきたということは、ほとんど王命ということかしらね」
「そうですね。
陛下がご存じないということはあり得ないと思います」
『じゃあ、決まりじゃん』
思わずオフェーリアは心の中で毒づいた。
「はぁ〜
ドーソン、王宮への返事、代筆を頼みます。
渋々お受けすると、正式な書式でお願いします」
高位貴族が公式文書に右筆を使うことはよくあることだ。
特にオフェーリアはこの国の書式に慣れておらず、まずはこれから勉強だ。
「これで如何でしょうか?」
さすがに異国の花嫁の教育係を任される人物である。
オフェーリアもそれなりの手跡だがドーソンはそれ以上だった。
「拝見致しますわ。
……なるほど、こういう言い回しを使うのですね。
結構です」
最後にサインして、王宮に届けるように言うと見た目でわかるほど脱力した。
「まさかこの歳で学生をすることになるとは思わなかったわ」
ドーソンは苦笑いするしかない。
しかし王宮がこのような手を打ってくるとは少し意外だった。
「ドーソン、あなた王宮にツテはあって?
あちらで何が起きているのか、少し調べてみてちょうだい」
「わかりました。
うちはあまり高位の貴族ではありませんが、それなりのツテはあります」
この後ドーソンは自身が手紙を持って王宮へと足を運んだのだ。
そしてオフェーリアの高等貴族学院への留学が決まり、公爵家嫡男の一年下、5年教育の4年生に編入することに決まった。
その翌日から制服の採寸やら何やらで忙しくなってしまい、ピピとの時間が取れずにオフェーリアはおかんむりである。
「編入試験、編入試験ねぇ」
一応目を通すように言われた、この国の歴史などの本を手に、気乗りのしないオフェーリアはまた毒づくのであった。




