『魔力を持つものと持たないもの』
この世界の大気には魔素が満ち溢れている。
そんななか、魔法族や一部の魔獣などは自らの身体の中で魔素(魔力)を作り出し、溜めておく器官を持つ。
そしてあちらの大陸に住む人間や魔獣などは大気の魔素を取り込み溜めておく器官を持つ。
そして、大変珍しいのだが、この大陸の人間たちのようにどちらも持たないものもいる。
この場合は魔法を使うことが出来ないので、その不便さを魔導具で補うことになるのだ。
「【オートマタ】は燃費が悪いのです。
あれは内部機関として魔石を使っていますが、少なくとも毎日魔素を供給しなければなりません。
我が家は私が充填することが出来ますが、もし団長さんが使用するとなると……おわかりですね?」
それなりの大きさ、おそらく最低でもドラゴンクラスの魔石が湯水の如く消費されるのだろう。
団長の頭に浮かんだ、オートマタ兵士など夢のまた夢であった。
「それでも技術の進歩には目を瞠るものがありますわ。
数年前は簡単な命令しか遂行できませんでしたが、今はご覧の通り人間と遜色ありませんもの」
オフェーリアが“3番”と呼ぶオートマタが一礼して壁際の所定の場所に戻っていく。
「でもオートマタに指図する人間が必要ですわ。
なので今回、とても良い人たちを紹介していただいて、感謝しているのです」
オフェーリアはそう言葉を重ねた。
「なので私がここにいる意味があるのかしら?
団長さんは……気づいていないようだけど」
騎士団が帰ったあと、オフェーリアの私室で、オートマタ7番に遊んでもらっていたピピが、7番に抱かれて応接室に入ってきた。
ここ数日忙しくしていたオフェーリアにかまって欲しかったようだ。
「監視の目がないというのはよいものね」
女官の2人とドーソンがいるが、3人とも何かを報告している素振りはない。
それは騎士団長が紹介してくれた者たちにも言える事だ。
「はあ、私の輿入れはいつになるのかしらね」
腕の中の仔鰐の存在も懸案事項になっていることに気づいていないオフェーリアだった。




