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そして、彼女に鎖で繋がれ異世界を旅をする! ?  作者: 村山真悟
第三章 汝の魂に安らぎを
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其の9 腹黒女の策略

 何だかんだで腹黒女は最強です


 見事にやられます(笑)


 ではお楽しみください


「…さてと、じゃあどうする?」


 ゲンナリしたままの周囲に声をかけるが誰も反応しようとすらしない……いや、関わりたくなさそうに皆が視線を逸らす。


「主殿、取り合えず指輪を身に付けて貰えますか?自力での具現化では維持が難しいですので」


 セレスに言われて初めて彼女が幽体ではなく具現化された実体であるのに気付き孝介は指輪を手に取り薬指に填めた。


「ありがとうございます。主殿と繋がることでこの姿を維持することができますわ……あと、四大精霊を顕現化して頂けますか?彼女達が言いたいことがあるそうですので……」


 チラリとエルズを見たセレスは彼女の笑顔にガックリと肩を落として大きなため息をつく。


 セレスの心情が痛いほど分かるのは先ほどから浩介の意識に口々にエルズの旦那に対して愚痴を発している四大精霊の感情が読み取れたからだ。


 五月蠅いぐらいに話し掛けてくる四大精霊にうんざりしながら孝介は彼女達の具現化を始める。


「顕現せよ、四大精霊」


 指輪から光が放たれ四大精霊が姿を現す。


 彼女達は具現化されるやいなや浩介の背後に隠れて、彼の耳元でエルズを指差しながら口々に愚痴という名のクレームを連発する。


「主殿!何とかして下さい。あの人の旦那、無茶苦茶なんですよ!下位の属性の精霊達が召喚されたくないと駄々を捏ねていて、もうわたくしは手一杯なのですのよ!」


 ディーネが声を張り上げる。


「そぉだぁ!そぉ~だぁ!休暇をよこせ~」


 とりあえず便乗するだけのサラ。


「…ノ、ノーミ…みんな…に、怒られた」


 シュンとしながら泣きそうなノーミ。


「…過重労働、反対」


 下位の精霊達に丸投げのため一切、疲れてもいないシルフィだがとりあえず参加していた。


 彼女らの批難がエルズの旦那に集中する。


 けれど当の本人が居ないため全ての矛先がエルズに向けられるのだが、全く気にする様子もなく寧ろ余裕の表情であった。


「……ここまで言われてその余裕って、ある意味で尊敬するわ……特にアンタの鋼の精神って…くっ、デカい…何でできてるのよ?」


 皐月は自分よりも豊かに実ったエルズの胸元に視線を向けながら恨めしそうにぼやく。


「ふふっ、旦那の愛情?貴方も揉まれれば大きくなるわよ。それに慣れてるからねぇ、これ位はまだまだ可愛い方よ」


 二つの意味で上手いこと言ってのけ、挙げ句にはニコッと四大精霊に微笑みかける余裕すらある彼女の姿に皆がイラッとさせられる。


 心の中で「誰のせいだと思ってんだ」と呟いた浩介に意識を共有する者達が大きく頷く。


「さすがは無責任皇女と陰口を叩かれても平然としているだけはありますね。もう、貫禄に近いですが……情けないです」


 帽子の鍔を下げてニルはガックリと肩を落とす。


「いい加減、話が逸れているのじゃ。お主ら、フェンリルとあったのじゃろ?どうするのじゃ?」


 雅のまともな発言に全員が正気を取り戻す。


「……そ、そうだな。フェンリルの願いはそこの腹黒女の旦那の所行を止めてほしいそうだ……で、セレスと主従契約を交わした俺に白羽の矢が立ったんだが…可能か?」


 少し考え込むような仕草を見せるセレスに少なからず不安が過ぎる。


「可能かどうかで言えば可能ですわ……ただ」


 言葉を濁しエルズを見つめる。


「エルズ様の旦那の生死を問わなければですが…」


 言ってる意味が理解できずに浩介は首を傾げる。


「どういうこと?」


 皐月の質問にセレスの代わりにエルズが答えた。


「せっかく順調に侵攻ができそうなのに突然、精霊達が誰も現れなくなったらどうなるかしら?」


 その説明に納得がいった。


 発案者に嫌疑がかかる。


「常闇の皇子なら良くて幽閉、悪くて死罪……どっちに転んでも救い出すのが難しくなるわね……」


 天井を見上げながら皐月が呟く。


 浩介はグレ記憶から常闇の皇子の記憶を呼び出し「…あぁ、そうだろうな」と同意するように頷く。


 常闇の世界は単純に言えば【力こそ正義、Ilove筋肉!】を地で行く世界だった。


 つまり、力無き者には制裁を容赦なく行うのが常闇の世界でありその統治者でもある冷淡な性格の皇子ならやりかねない。


 浩介は深々とため息をつき項垂れる。


「なんで、統治者にまともな奴がいないんだ?」


 皐月をジト目で見つめる。


「何で私を見るのよ……知らないわよ」


 不満げに答えた皐月がボソリと呟いた。


「……ってか、見捨てれば良いんじゃないの?」


 皐月の言葉にエルズの余裕の笑顔が固まる。


「…えっ?」


 聞き返すエルズに雅も頷く。


「うむ、それもありじゃな」


 雅の思わぬ肯定にエルズの顔がさらに引き攣る。


「…えっ?」


 エルズから視線を逸らしながらニルまで頷く。


「そうですよね、後先を考えずに行動してますし何が起きても自業自得と判断されても仕方ないと思いますけど?」


 冷や汗を流しながら焦りを見せるエルズ。


「…まさか、あなたまで!?」


 その様子を浩介の影から見ていた四大精霊がニンマリと笑みを浮かべながら……。


「「「「賛成ぃ~!!」」」」


 声を揃えて同意する。


「…貴方達まで」


 エルズにしては珍しくガックリと項垂れる。


 不憫に思ったのかセレスが彼女の肩をぽんぽんと優しく叩き、少し涙目のエルズを見つめる。


「セレスちゃ~ん、貴女だけよ味方なのは……」


 擦り寄ってくるエルズを哀しげな表情で。


「諦めなさい、自業自得です」


 とどめの一撃をエルズに食らわせるのだった。


 腹黒女ここに死す……。


 誰もがそう思った。


 だが、しかし腹黒女の項垂れていた表情には悲壮感など微塵もなく微かに笑みさえ漏らしている。


 その表情に気付いたセレスの脳裏に嫌な予感が過ぎり、離れようと後退る。


 だが、逃がさぬようにその腕をガシッと掴むと不敵な笑みを浮かべながらエルズは顔を上げた。


「…捕まえたぁわよ、セレスちゃ~ん」


 涙目が嘘のように爛々と輝いている。


「…何か企んでる……ちょっ、これって、なんか、嫌な予感するんだけど……巻き込まれるんじゃない?」


 その姿にたじろぐ皐月。


「…いや、手遅れじゃ。周りを見てみるのじゃ」


 雅の声に皆が周囲の異変に気付く。


 部屋の空間が奇妙に歪み捻れ、四方の壁からは術式が浮かび上がり淡い光を放ち始める。


 その術式を見つめ唖然とするセレスに満面の笑みを浮かべながら彼女の手から強制的に力を奪い術式を次々に発動させていく。


「この術式……まさか?そのために具現化を!?」


 満面の笑みを浮かべるエルズ。


「大正解よ、セレスちゃ~ん」


 最初から嫌な予感はしていたのだ。


 この世界に向かう際に「…不安だから手を繋いでいたい」などと汐らしい表情で何故か具現化を強くエルズに頼まれ、首を傾げながらもセレスは彼女に従ってしまった。


 つまり、エルズにとっては旦那が見捨てられることも最初から織り込み済みであり、しっかりと対策を立てていたのだ。


 この部屋を丸ごと使った【扉】の開放、自分の能力だけでは無理だったためセレスの力を利用して発動させる。


 まさに腹黒女……だった。


 具現化することで孝介と繋がる……つまりは具現化された四大精霊とも繋がることになる。


「主殿、非常に不味いですわ……」


 力を奪われていく感覚に焦るディーネ。


「やられたねぇ~」


 何故か愉しそうなサラ。


「…うっ、…屈辱…」


 抵抗できず利用され泣きそうなノーミ。


「敵ながら天晴れ」


 エルズを敵認定するシルフィ。


 彼女達の力もセレスを通してエルズに流れ込む。


「じゃあ、ヨロシクね。行ってらっしゃい」


 セレスの手を離し、歪んだ空間から離れると和やかな笑顔と共に小さく手を振るエルズに皐月は鎖を伸ばしエルズの身体を縛る。


「…アンタも道連れよ」


 けれど、エルズを引き寄せようとした瞬間に空間が収縮を始め鎖が引きちぎれた。


 これすらもエルズの予想通りだった。


「残念だわ、行きたかったのだけれど…」


 全く残念そうに無い笑顔が閉じられていく空間の歪みから見えて皐月は大きく舌打ちをする。


「ちっ!…帰ってきたら憶えときなさいよぉ!この腐れ腹黒女ぁ~!!」


 皐月の叫び声と共に空間が閉じられた。


「う~ん、無理ねぇ。だって、もう忘れたもの」


 誰もいなくなった部屋で悪戯っぽい笑みを浮かべる腐れ腹黒女のエルズだった。

読んでいただきありがとうございます。


ブクマ、評価増えました!


ε=ε=(ノ≧∇≦)ノ感謝に堪えません。


これからも頑張っていきますので


今後もよろしくお願いします。


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