あれ? 先輩がカッコよく見える……?
「吸血鬼って、あの吸血鬼?」
あたしの世界じゃ鋭い牙で血を吸うバケモノって感じなんだけど。
「そうだ」
「ねえルヴィ、吸血鬼って血を吸うバケモノだよね?」
「ええ。その通りです」
うん、こっちの世界でも一緒ってことか。
あたしは先に白玉あんみつを食べ終えると、ロキ先輩に詳しい話を聞くことにした。
「具体的にどういう経緯なんですか?」
「……昨日の朝方、グラスパー通りを更に南へと下って行った先の路地裏で干からびた女性の死体が見つかった」
げっ、もろじゃないすか。
「死体の鑑定結果は失血死と判断され、そしてくびすじには特徴的な噛みあとがつけられていた」
ロキ先輩はそこから眉をひそめてこう言った。
「――吸血鬼がまたやってきたってな」
また? またってことは以前も来たことがあるってこと?
「前にもそのような事が?」
あたしの疑問は代わりにルヴィがロキ先輩に問いかけてくれた。ロキ先輩はルヴィからの質問に対し、優しく答える訳ではなく真剣な表情で答えを返す。
「以前もあったさ。女性ばかりを狙う吸血鬼が、学校までやってきたんだ」
ロキ先輩が知っているってことは、ここ一、二年の話なんだろう。だけど話はあたしの予想外の方向へと飛んでいくことに。
「そいつは俺が尊敬していた先輩を噛み殺した……だから俺は、そいつを氷塊にしてバラバラに砕いてやったんだ!」
ロキ先輩の異様な熱のこもりように、あたしとルヴィは言葉を失った。そしてロキ先輩にも尊敬する人物がいたのだとあたしは始めて知った。
「その尊敬する方は、女性だったのですか?」
「ああそうだ。後輩を撒き込めないと言って俺を置いて一人で討伐に行った結果、俺の目の前で首をかみ切られて死んだよ」
だからロキ先輩、女性をできる限り自分の近くに置こうとしているのかにゃー。そうすれば自分が守れるって思ってるってことかな?
「今回も俺が殺す。吸血鬼の心臓に、氷の杭を打ち込んでやる!」
いつもと違って熱のこもった先輩を見たあたしは、なんだか今までの嫌味な先輩と同一人物とは思えなかった。
「……あたしにも、手伝えませんか?」
「……駄目だ」
「えぇー!? 先輩のケチ」
「駄目なものは駄目だ! ……仮にもてめぇらを巻き込むわけにはいかねぇ」
おっとぉー、ちょっと先輩カッコいいぞー?
だけどそれじゃあ駄目なんだよねー。
「けどそれって、先輩の先輩と同じことしていますよね?」
「…………」
案の定、ロキ先輩は何も言い返すことができなかった。あたしは更に畳み掛けるつもりでこう言った。
「先輩なら、あたし達のことを信頼してくれてもいいじゃないですか!」
先輩にとって一応の後輩なら、あたし達にとっても一応の先輩だもん。聞く限りで危ないことに、先輩一人で行かせる訳にはいかない。
「……はぁ……参った」
「ついて行っていいですか!?」
「好きにしろ。だが俺はお守をするつもりはねぇからな」
「流石先輩! イケメンですね!」
「ちっ、都合のいい女だ」




