よかったけどよくなーい!!
先日は投稿ができず遅れができてしまい申し訳ないです。
「捕まえた奴等は軍に引き渡しておいた。それで、後はキリュウをどうするかだが……」
「えっ? どういうことですか?」
日も傾き始める中、生徒会室にてあたしとルヴィはヴィンセント先輩の言っている意味が解らず首を傾げる。
フューリーはというと、今回の事件も含めてレポートにするようにアレク先生から言われて先に寮に戻っている。そんな訳で生徒会室にいるのはあたしとルヴィ、そしてキリュウ先輩を除いた生徒会の四人。
「先輩が? どういうこと?」
「チッ! さっきも言っただろうが。あいつの身体から、魔導器官がねぇってことをよ」
うん。それは聞いたけど……。
ヴィンセントは椅子に座っていら立ちながらそう言うと、あたしよりもルヴィの方が勘が良かったみたいで、すぐに答えを導き出している。
「つまり……この七曜魔導学院に通うにあたって、魔導方程式を解けないことがどういう事を意味するのか……」
……あっ。
「えーっと、もしかしてキリュウ先輩が学校に来られない可能性があるってこと……?」
「魔導方程式を解けないということは、そういう事になるな……」
ヴィンセント先輩は少し悔しそうにして腕を組んでいる。そりゃー、何とかしたい気持ちはあたしだってあるけど……。
「……魔導器官が無いなら、魔導方程式を解いても意味がない……」
「分かっている! 少し口を閉じていろミクム!!」
「……ごめんなさい」
ミクム先輩は不要に口を開いてしまったことをヴィンセント先輩に咎められ、黙ってその場にかがみこんでしゅんとしている。
「キリュウめ……バカがつくほど正直な女で扱いづらい奴だったが……」
ロキ先輩も、流石にあまり罵倒の言葉を吐けないようだ。
「キリュウちゃんがねぇ……アタシ、今からでも《悪魔の右手》を皆殺しにしてこようかしら。そうすれば少しはスッキリするかもねぇ」
「クロウン! 頭にきているのは分かるが、軽率な行動は止めろ」
「でも悔しくないの!? アタシは悔しいわよ! クラウン家に魔導器官を復活させられるような秘術があるなら、今すぐあの子に使っているわよ!」
クロウン先輩は特にキリュウ先輩と接点が多々あったみたいで、友達であり後輩でもあったキリュウ先輩が退学せざるを得ない状況が悔しくて拳を震わせている。
「とにかく、学長に進言してせめて在籍だけでも――」
「その必要はない」
生徒会室のドアを開けて入ってきたのは、意外な人物だった。
「……アレクサンドロ=ドゥルガー。魔導軍最高指揮官であるあんたが、生徒会室に何の用で」
「まあまあ、そう警戒する必要はないよ、ヴィンセントくん」
「チッ、相変わらずくえねえジジイだ」
ヴィンセント先輩の視線の先に立っていたのは、アレク先生だった。アレク先生は近くにキリュウ先輩を連れていて、あたしはどちらかというと先輩の方に視線が向いていた。
「ともかく、先ほどまで君たちも悩んでいた事だが、キリュウくんのこの度の処遇が決まったことを伝えに来たのでね」
そういうアレク先生はというと、重苦しい話をしに来たというより軽い世間話をしに来たような態度を取っている。
「やっぱり、退学なのですか……?」
「確かに彼女は魔導器官を失い、このまま学園に残れる資格を失ってしまった」
じゃあ、やっぱり……?
「しかし彼女のこれまでの功績を踏まえ、彼女はこのまま直接私の直轄の軍部へと転属することとする」
「えーっ!?」
クロウン先輩は驚きの声を挙げたが、ヴィンセント先輩はまだ納得がいっていないような表情を浮かべている。
「つまり彼女は七曜魔導学院を退学することとなるが、軍部の人間としてこの学校に滞在し続けられることとなった」
「……それって、先輩が学校にいてもイイってこと?」
「そういうことだ、トウジョーくん」
「や、やったぁー!」
あたしは嬉しさのあまり、その場でルヴィと抱き合った。
「はぁあああ……」
クロウン先輩は安堵したみたいだけど、その反動でその場にへたり込んじゃった。
「……これで満足かね? ヴィンセントくん」
「俺に当てつけるのではなく、キリュウに聞いたらどうだ」
「そうだな……どうだねキリュウくん?」
アレク先生が振り向いてキリュウ先輩の様子をうかがうと共に、皆の注目も一点に集まる。
キリュウ先輩はまるで夢でも見ているみたいに、しばらくの間その場でぼぉーっと立ち尽くしていた。
「……わ、私は……まだこの学校にいてもいいのでありますか……」
「ああ。もちろんだ」
「……あ、ありがとうございますっ!!」
キリュウ先輩は頭を下げて何度も先生にお礼を言った。あたしはその後先輩の方へと近づいて、これからも一緒にいられることの喜びを分かち合った。
「先輩! よかったですね!」
「ああ! もちろんだとも!」
「よかったわねぇキリュウちゃん」
「クロウン殿……ありがたき幸せです!」
して喜んでいるのもつかの間で、今度はヴィンセント先輩が具体的な問題を提示し始める。
「おいジジイ。キリュウが辞めるってことは、生徒会室の席に空きができる訳だが」
「そこは問題ない」
アレク先生は既に生徒会の庶務の後継者を見つけているようで、その場にて笑顔で後継者を指さす。
「彼女がいるじゃないかね」
えっ!? あたし!?
「あたし一年生なんですけど!?」




