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た、大変なことになっちゃった……

 キリュウ先輩を基地へと連れ帰ってから、先輩はすぐに医務室へと運ばれて行った。

 すぐさま処置を施さないといけないと言われてから数時間、あたしとルヴィ、そしてフューリーはずっと処置室の開かない扉の前で椅子に座って待っている。

 そして今回の騒ぎを聞きつけて、急遽きゅうきょ学院からヴィンセント先輩が駆けつけて来てくれた。先輩は黙りこくったまま壁に寄りかかって、じっと医務室の扉を睨みつけるかのように待ち続けている。


「……大丈夫かな」

「大丈夫だと、思います……」

「……あたしが残るって強く言っていたら、結果も変わったのかな」


 あたしが弱音を吐いていると、フューリーはすぐにそれは違うと言って話をさえぎる。


「トウジョー、それを言うなら俺が下手にルヴィを責めていた時間も無駄だったんだ。自分を責めるなよ」

「お前たちはキリュウの指示に従った。それが良かったのか悪かったのかは関係無い事だ」


 ヴィンセント先輩も遠まわしに自分を責めるなと言ってくれた。だけどそれでも、納得できるほどあたしは単純じゃない。


「……キリュウ先輩なら大丈夫です。あの人なら、必ず――」


 ルヴィが励ましの言葉をかけようとしたところで、処置室の扉が開けられる。そして中から今まで処置をしていたのであろう医務担当の女性の人が、出てきてこう言った。


「何とか一命は取り留めました」

「よ、よかったー!」


 あたしはその言葉を聞いた瞬間、今までの緊張が切れてその場にふにゃりと脱力した。しかし女性の人の言葉は更にこう続いた。


「――しかし魔導器官メディアオルガンの方は外的な要因により切断され、失われてしまっていました」

「何だと……!?」

魔導器官メディアオルガンが、失われた……どういう意味です?」


 ヴィンセント先輩はすぐに察して驚きの表情を浮かべているが、あたしはどっちかっていうとルヴィと同じ疑問を持つばかりで首を傾げる。

 医務担当の女性はとても残念そうな表情を浮かべながらも、現実を伝えなければと思ったのか、こう説明した。


「彼女はもう、魔導方程式マジックカリキュレーションを解いても発動できない体になってしまったということです」

「えっ……?」


 一瞬言葉の意味が理解できなかった。だがすぐに理解した。

 魔導器官メディアオルガン魔素エレメントを蓄える器官であり、実際に魔導方程式を発動する際にはそこに蓄えておいた魔素エレメントを消費して魔導方程式を発動するわけなんだけど……その魔導器官メディアオルガンが無いってことは、すなわち――


「――どうにかして先輩の魔導器官メディアオルガンを復活させる方法はないんですか!?」


 焦るあたしを抑えながらも、ヴィンセント先輩は現実の話を始める。


「残酷な話だがトウジョー、それは不可能に近い。移植という形であるならまだしも、そもそもゼロから復活するなど、奇跡でも起きない限り不可能だ」

「そ、そんな……」


 あたしはその場に座り込んだ。だけど悲しみよりも先に、怒りに拳を震わせていた。

 どうして先輩がそんな目に合わなくちゃいけないのか。あの女に次に会ったら、確実に消し飛ばさないと気が済まない。


「……ルヴィ。これはしっかりと復讐を果たさないといけないよね」


 あたしの怒りのこもった問いかけに対し、フューリーは同じ考えでもって応えてくれた。


「ああ、流石にこれは許せねぇ。俺も手伝うよ」

「ありがとうフューリー。《悪魔の右手デヴィルスアーム》は徹底的に叩き潰さないと」


 ヴィンセント先輩も無言のままでありながらも、小さく頷いている。


「……しかしどうやって敵を見つけるのですか? 相手は神出鬼没で――」

「相手はまた来るよルヴィ。だって、まだルヴィを捕らえられていないから」


 そしてあたしが絶対にルヴィまで手をかけさせない。次に会った時は最初から容赦するつもりはない。

 ヴィンセント先輩もあたしの考えに同意してくれたようで、ルヴィの方を向いて先輩はまだ敵が追ってくることを予測すると共に、実地演習をいったん中止して引き返すことを提案した。


「クロウンから事情は聞いている。てめぇがロッド家の娘だってことは知っているが、相手は唯取り逃がしただけで今回の件で痛手を負ってはいない……つまりまだ襲ってくる可能性は十分にある」

「ヴィンセント先輩、もう実地演習なんて話じゃないですよね」

「ああ。今回の実地演習はキリュウの負傷もあるからこれで中止だ。今日はキリュウの容態を見て、明日早くから汽車に乗って七曜魔導学院に戻る。少なくとも、此処よりは警備が整っているだろうしな」


 ヴィンセント先輩の話によれば、実地演習で重傷者を出したどころか魔導方程式に関する設備と押しが成っていないことは、確実にアレクサンドロ=ドゥルガーの耳に届くだろうとのこことだった。近くのうちに査察が入るだろう。


「とにかく、お前達もご苦労だった。後はキリュウの面倒は俺が見る」

「分かりました……」

「それと、トウジョー」


 何故かあたしだけが先輩から呼び止められる。


「後で話がある」

「……? はい?」

 何であたしだけ呼び出しなんだろう? ……あっ。


「……絶対十九階層の魔導方程式を解いた件についてだ」


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