たるんどりますな!
「で、チミたちは我々の軍の実地演習に来たというワケかね。わざわざ遠くからご苦労さん」
「ハッ! この度は我々のような若輩者を受け入れていただき感謝いたします!」
それにしても随分と横暴な奴だにゃー。少しはキリュウ先輩の態度を見て改める気はないのかね。
今あたし達と相対しているのは、このシュラスタを仕切っている軍のお偉いさんである
グラモリウス三世(なんでもここは世襲でやっているみたい)。軍所属にしてはだらしのない太った身体なんだけど、これでも一応ここの所長なんだって。
丁寧な対応をしているけど、それがこの人の元々の性格なのかそれともあたし達の所属している七曜魔導学院にへりくだっているのか、今のところは分からない。
「来て早々だが、この基地を案内させてもらうとしよう。ささ、ついてきなさい」
そのまま荷物持ちを引き連れた状態で、あたし達は軍の施設を見回る事になった。
◆◆◆
「――向こうが宿舎で、こちらの施設は食堂。向こうに見える運動場が実質的な訓練所になる。ここまで質問は?」
散々振り回されてきたところで、ようやくこっちに喋る時間が。
「……質問、よろしいでしょうか」
「なんだい?」
キリュウ先輩が問いかけると、グラモリウスは構わないといった様子で質問に応じる。
「魔導方程式の訓練の方は、どこでなさっているのでしょうか?」
「魔導方程式? ああ、あれはうちではやってないのよ」
「……どういう意味です?」
確かに銃を使った実弾訓練の音は聞こえるけど、魔導方程式に関連するような部屋や魔法陣を一切見かけなかった。
「うちは実弾主義なのだよ」
「といいますと?」
「たとえばの話、チミたちを馬鹿にするつもりじゃないけれど魔導方程式を解くよりも早く実弾は相手の脳天を打ち抜くわけであって」
「発動に時間を要するということは、戦場においては死を招くと?」
「まあ端的に言えばそうなるねぇ」
このおっさんの前で【光速】=【消失】したらどうなるんだろうとふと思っちゃったりもするけど、どうでもいっか。下手に実力出す意味もないし、何よりアレク先生意外に軍に目をつけられてしまってもイヤだし。
「……そうですか。では我々はあまり役に立ちそうにありませんな」
「いやいやいや、そういうわけではないよ。まあ、今日のところはお疲れだろうし、日も暮れているから休みなさいな。明日から任務を与えるとしよう」
「ハッ!」
最後にグラモリウスは荷物持ちに部屋まで案内するように指示をすると、荷物持ちの守衛はそのまま引き継ぐ形であたし達を兵舎へと招き入れて行った。
「ここを四人で使ってもらう」
「えぇー、フューリーも一緒ってこと?」
「お前俺をなんだと思ってんだよ……」
「だって冷静に考えなよ。女子三人のところに男子一人って……きゃー、あたし襲われちゃうの!?」
「しないから!」
「じゃあフューリーは女の子には興味がないってこと?」
「そういう事じゃなくてだな……」
フューリーが参ったという形で頭を掻いていると、守衛は苦笑いをしながら荷物を部屋に置いて、使える施設について説明をした。
「ここを出て右手に、男女別のシャワー室がある。夕食は七時から三十分間、先ほど説明があった食堂の方に向かってくれ。何かあれば左手の方に兵長室があって、そこに俺がいるから」
「分かりました」
キリュウ先輩が敬礼をすると、今度は守衛の方からも敬礼を返してくれた。
それまでは緊張感を保っていたキリュウ先輩だったが、守衛が出て行ってドアを閉めると共に大きくため息をついた。
「……ハァ」
「どうしたんですか先輩?」
「まさか、向こうは私が知らないとでも思っているのだろうか」
一体何を?
「軍に所属するのであれば、例え支部だろうと魔導方程式を解ける場所を設けておくのが鉄則だ。ここはそれがない。つまり――」
「ここの軍は規則を破っているってことですか?」
「それに加え、夕方であるのならばまだ訓練の時間はあるはず。なのにあの守衛のたるんだ様子……これは問題だ」
うわー、キリュウ先輩が燃えているんだけど。
と思っていたらすぐにキリュウ先輩の怒りの炎は鎮火し、静かになる。
「……かといって、軍を相手に進言などおこがましい……」
キリュウ先輩がなやんでいたところで、あたしはある案を思いつく。
「だったら魔導師を相手に個々の人達が戦えるかどうか、やってみればいいんじゃないですか?」
「どういう意味だ?」
「つまり、ごにょごにょ……すれば」
「なるほど」
「薫さん? どうするつもりですか?」
「まあまあ、ちょっとだけ、ね?」
これで少しはあいつ等の鼻を明かせるような気がするし、明日が楽しみー!




