うーむ、怪しげな匂いがしてきたぞー?
「……ふーん」
それにしても、随分と分かりやすいにゃー。
さっきまで活気付いていた大通りも軍のトラック二台通っただけでこの通り、一転して死んだように暗い雰囲気を漂わせている。
「軍のトラックって、どういう時に動かすんですか?」
「主に地域に即した物資運搬が目的だが……今のはよく分からない」
キリュウ先輩が言うには、今の時期だと物資運搬以外にも異動などがあるため、軍のトラックだからと言って一概に決めつけるのは難しいとのことだった。
「……くそっ」
そんな中あたしはフューリーが軍のトラックを忌々しく見つめては、小さく悪態をつくのを聞き逃しはしなかった。
今ツッコんでもいいと思ったけど、キリュウ先輩がいる前でするのはあんまりよくないかな。
「……先輩、先を急ぎましょ!」
「そうだな。引き続き、軍の基地の方へと向かうとしよう」
◆◆◆
「――そこそこ大きいね」
「そうだな。だが、少し警備が他に比べて厳重な気がしなくもない」
確かに守衛さんらしき人が門前で自動小銃持って何人も立っているし……。
外観は特に派手でもなくいたって地味な基地って感じだけど、なんか流れ出ている雰囲気が物々しいにゃー。
「今日からここで過ごすことになる。地道な作業もあるかもしれないが、これも勉学の一環だと思って実習に臨むように」
「了解しました」
「面倒ごとだけは勘弁して欲しいけどにゃー」
「おいおい、誘った側がそれを言うなよ」
キリュウ先輩は基地内部に入るべく、守衛の一人に話しかける。
「この度七曜魔導学院より実地演習を受けに来ました、キリュウ=クナシダ及び遠征学生三名、只今到着いたしました!」
守衛はキリュウ先輩の丁寧な対応に対して一瞬怪訝そうな表情を浮かべたが、仕方ないといった様子で待つように指示を下す。
「ここで待て。それと、下手に動くなよ」
「了解」
キリュウ先輩は敬礼をしたが、守衛は一瞥もくれずにそのまま吉の方へと向かって行く。
「……なんか、感じ悪くなーい?」
「確かに、少しおかしい気はします」
「軍なんざ、どこもこんなもんじゃねぇの」
あたしとルヴィが首を傾げる中、フューリーは当たり前といった様子で皮肉を漏らす。
「地域の安全とか言って、何もなしに金だけ喰う集団だろ」
「フューリー、流石に表だってそれ言っちゃダメだって」
「悪かったよ。けど、俺の認識はこんなもんだ」
キリュウ先輩はフューリーを睨みつけたが、あたしがフューリーを怒った事で何とかその場は矛を収めてくれた。
「軍に入る者が、そのような不用意な発言をしないように」
「……分かりましたよ」
守衛が戻ってくると、その表情は一変してこちらの機嫌をうかがうかのようにへりくだっている。
「よ、ようこそシュラスタへ! ささ、奥で所長が待っていますから!」
「あ、ああ……」
「お荷物はこちらでお持ちします! ささ、こちらへ!」
「あ、あたし自分で持ちます」
「そう言わずに、私達でお持ちいたしますから!」
うーん、この態度の変わりようは何かあるな。
「……じゃあ、お願いしまーす」
「はい! では、行きましょう」
そうして守衛に言われるがままに、あたし達は基地の方へと招かれていくことになった。
◆◆◆
「――ささ、こちらです」
所長室の前まで来たあたし達は、少しだけ緊張感を抱きながらもキリュウ先輩が戸を叩くのを見守る。
「誰だ?」
「ハッ! この度七曜学院から実地演習を受けに来た者であります!」
「それはそれは、お入りなさい」
物腰が柔らかそうな中年の男の声が聞こえると、キリュウ先輩はドアを開けて所長室へと一歩踏み入れる。
それに続いてあたし達も中に入り、所長ととうとう顔を合わせることになったのだが――
「お待ちしておりましたよ、学生さん。ささ、そこに座って座って」
……うわ、中年太りの偉そうなひげを蓄えたおっさんが所長かよ……。




