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軍人少女!

 クロウン先輩がアリスの人狼化の件について事態の収拾をしてくれたおかげで、特に先生達から何も言われずに済んだ。

 アリスは何度もあたしの服を破いたことについて謝ってきたけど、そこまで気にしてなくてもいいのに。


「まったく、とんだトラブルメーカーだぜ」

「あはは……」


 そしてクロウン先輩から事後処理の為にアリスを連れて生徒会室に来た訳だけど、ヴィンセント先輩はやはりお前かといった様子であたしの顔を見るなりため息をついた。

 今のところ生徒会室にはヴィンセント先輩とクロウン先輩しか見当たらない。


「昨日の今日で、一体いくつてめぇがらみのトラブルが起きてんだよ……」

「申し訳ない……」

「まっ、流石にあれを撃てるだけはあるな」

「アレって何のことかしら?」


 あっ、今のところ知っているのは一年の友達とミクム先輩にロキ先輩、それとヴィンセント先輩だけだっけ。


「……おい、言っていいのか?」

「……生徒会だけで秘密にしてくれるなら」

「だ、そうだが。てめぇは約束を守れるか? クロウン」

「……随分と深刻そうな話ね。いいわよ、アタシお口チャックするから」


 あんまり信用できないけど、まあいっか。

 ヴィンセント先輩はあたしに了承を得た後、入学式から今日この日までの二日間でのできごとを、そしてあたしが十六階層の魔導方程式を放ってヴィンセント先輩を打ち負かしたことも全てクロウン先輩に伝えた。


「……ま、まあ……」

「流石の軍事一家も絶句か、無理もねぇな」

「貴方、最ッ高にイカレているわ……」

「酷い言い方ですね……」

「そうじゃないわ、凄すぎて言葉が見つからないのよ……」

「ぼ、ぼくもびっくりしました……こ、こんな人だったなんて」

「アリスは可愛いから許すー。でも他の人に話しちゃダメだよ?」

「う、うん……」


 一応可愛いとはいえアリスにも釘を刺しておかないと、広まり過ぎると面倒なことになりそう。ただでさえ今面倒なのに。


「……それにしても、そんな実力を持っているならわざわざ学校に来なくても、直接国家魔導師試験を受けたり軍事採用試験を受けても余裕で首席でしょ?」

「それがこいつの言い分によれば、このマギカに来てから初めて魔導方程式というものを知ったらしい。馬鹿げた話に聞こえるが、こいつはそれだけの才能の持ち主だってわけだ」


 まあ、神様のお墨付きだからねー。


「……だったら、一年生だけど実地演習に行ってもいいんじゃないの?」

「実地演習?」

「なんですか、それは……?」


 クロウン先輩の口から出た謎の言葉に、あたしとアリスは首を傾げる。


「貴方達、この学校が軍事関連だって知っているわよね?」


 それはもう重々に。ヴィンセント先輩から話はすべて聞いていますとも。


「簡単に言えば軍部の雑用として、地方の警備について行くお仕事よ」

「おい、いくらこいつが優秀だからって一年の段階で軍に関わらせるのは止せ!」

「でも勿体無いじゃないの。アタシとしてはそうした方がいいと思うけど」


 何やら先輩同士で口論があっているようだけど、軍部の雑用って……やっぱりそういうことなのかなー。

 でも正直言って、学校の外を見てみたい気がしない訳でもない。


「庶務のキリュウちゃんに聞かないと分からないけど、あの子について行かせれば大丈夫でしょ」

「チッ、それでも俺は了承できない」

「えぇー、つまんないわぁ」


 クロウン先輩がやる気を削がれたかのように生徒会室のソファでうなだれていると、ちょうどその庶務らしき人物が生徒会室のドアを開ける。


「っとと、キリュウ=クナシダ、実地演習から今帰りました!」

「あら、おかえりー」


 クロウン先輩の言葉から、この人がキリュウ先輩なんだろうけど……この女の人、軍服に身を包んで敬礼しているんですけど!?


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