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女性同士だからってそういう刺激が強い光景はどうかと思うなあたしはー!?

「――っと、もうこんな時間か」


 この世界の時計は元の世界と同じ時を刻んでいるようで、現在の時刻は七時を回っている。

 もちろん授業はとっくに終わっているようで、恐らくルヴィが寮であたしの帰りを待ってくれているところだろう(……多分)。


「で、どうする気だヴィンセント。この男は」

「軍部の方々に引き継いでもらうしかねぇだろ。ここで口を割らないのなら、いずれそういう決まりだ」

「……じゃあ手紙を置いて、クロウンに任せる……」

「そうした方がいいだろうな。ミクムはメモを残すついでに、この一年を寮に送り届けてくれ」

「えー、面倒……」

「俺が女子寮に行けるワケでもねぇだろ。頼む」

「……分かった」


 ミクムは不満げに頬を膨らませながらも、ヴィンセントの頼みだからと渋々受け入れた。


「俺とロキはもう少しだけ探りを入れて、クロウンに奴を引き渡してから寮に戻るとするか」

「……チッ、なんでよりによっててめぇと一緒の空間に残んなきゃいけねぇんだよ」

「グダグダ言ってんじゃねぇ。それにまだ、『魔法将棋マジックチェス』の決着ケリはついてねぇだろ?」

「……いいだろう。アレならてめぇに勝てる」


 ちょっと、名前を聞く限りだと生徒会が学校に遊び道具を持ってきているようにしか聞こえないんですけど。


「……一年生は、早く来て……ミクムはもう眠いから、シャワーを浴びないといけない……」


 そして相変わらず右腕を胸の支えにしているミクム先輩から呼び出され、あたしは生徒会室に二人を残したまま、ミクム先輩の後をついて行く。


「……あの二人、あのままにしていいんですか?」

「…………」

「あ、あのー」

「覚えておいて。ヴィンセントには既に、好きな人がいるから……だから、諦めて」

「べ、別にあたしはヴィンセント先輩のことを尊敬はしていますけど、好きっていう事じゃないですよ? likeであって、Loveではないですよ」

「……ほんとに?」

「本当ですって! あたし、ウソつかない!」


 ミクム先輩のその蔑む視線はある層には需要がありそうだけど、あたしにMッ気はないですよ!


「……ふーん……」


 その後先輩は何も喋らなかったものの、校庭から寮までの間、あたしとミクム先輩の間には謎の緊張感が走り続けていた。



     ◆◆◆



「――あっ、薫さん! 今までどこにいたんですか!?」

「えっへへー、ちょっと生徒会に呼ばれちゃって……」


 寮の扉を開くと奥の大広間へと続く廊下へとつながっているが、ルヴィはその廊下のすぐ玄関を開けての所でまってくれていた。


「それにしてもごめん、こんな一人で待たせちゃって――」

「まさか、また【電磁ガンマ】=【直行レイ】を撃ってしまったんですか!?」

「……【電磁ガンマ】=【直行レイ】?」


 ちょっとストップ! わざわざミクム先輩の前で言わなくてもいいじゃない!


「ルヴィ、それは今言う事じゃ――」

「……もしかして、講堂の天井に穴を空けたのは――」


 ミクムは空いた左手で、あたしを鋭く指さしする。


「――おまえか……」


 やっば、これ確実にばれたかも……?

 あたしが十二階層解けるっていうのは先輩たちの前ではかくしたかったんだけどにゃー。


「そ、そうですけど……?」

「……じゃあ、おまえはあの時ウソをついたのか?」

「あの時? あっ、基礎を知らないっていうのは本当なんですよ!」

「……本当の事を教えて」


 ミクムの視線に、先輩からの視線に凄まれたあたしたち二人は、この学校に来た本当の事をミクム先輩にも話さざるを得なくなった。



     ◆◆◆


「――つまり、おまえは田舎の超天才で、おまえは七曜の魔法家で逃げて来たってこと?」

「その通りです」


 あたし達は寮にあるのある方へと先輩に連れられていく道すがら、様々な事を聞かれた。

 ルヴィは今までロッドの名を語らなかったことで誤魔化してきたところを、自分の失態によって身分をばらしてしまった。

 幸か不幸かあたし達が色々と聞かれているまで、シャワー室まで歩いている間は誰ともすれ違わなかった。

 脱衣所に到着したところでようやく他の女子生徒を見つけることが出来たが――


「ぶふぉっ!?」

「えっ!? 薫さん!?」


 ヤバい、鼻血が……男だった時には到底みられなかった桃源郷が、あたしの目の前に広がっているワケなんだけど。

 あー、あたし今女で心からよかったと思えるよ。


「ごめん、ちょっと湯気にあたっちゃって……しばらくしたら収まるから」

「湯気にあたるなんて、どういう体質か知りませんが大変ですね」

「………悪いけど、茶番に付き合っていられるほどミクムは暇じゃないんだよね……」


 ミクム先輩はそう言って先に脱衣所で服を脱ぎ始め――って!


「ちょ、もう無理……ッ!」

「薫さん!? お腹を押さえてどうしたんですか!?」


 お腹じゃなくてもうチョイ下の、今は無かったモノを押さえているんだけど……ダメだ、直視できない。もうR‐18とか軽くぶち抜いてる。目の猛毒。

 なんでったって目の前で全裸の巨乳少女を見なけりゃならないの!? いや女同士だからおかしくはないんだけど、おかしいんだけど!

 目の端に巨大なマシュマロがうつるだけであたしはもう、もう……!


「ふにゃぁ……」

「薫さん!? 薫さん!? 倒れちゃいました……」

「……ミクムは知らないよ」


 この瞬間あたしは改めて、元が男だったことを後悔し、喜んた。



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