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即席問答!!

「――さん、起きてください! 薫さん!」

「ふにゃ……? なんか、物凄い光景を見た事は覚えているんだけど……」


 うーむ、イマイチ覚えていない。残念。


「ここは……?」

「……起きた? じゃあ、ミクムは部屋で寝るから……」


 ミクム先輩はそう言って、先に部屋を出ていく。

 辺りを見回したところ二人一部屋の殺風景な相部屋のようで、ここにあたしとルヴィが寮で割り当てられているようだ。

 気がつけばあたしは分厚い毛布がついたベッドに寝かされていた。服装もこの学校支給の寝巻きらしきものに着替えられていて、あたしはあれ? と首を傾げる。


「あたしの服は?」

「薫さんが気を失っている間に、ミクム先輩が着替えさせてくれたんですよ。あの方は不愛想ですけど、親切な方でした」


 えっ!? あたしの知らない間にそんな高度なプレイが行われていたってこと!?


「……あー、何で途中でも起きなかったんだよー! あたしのバカ!」

「確かに先輩の手を煩わせてしまったのは申し訳ないですけど、仕方ないですよ」


 そういう意味じゃない!


「……あー、明日からどういう顔してミクム先輩と会えばいいのか……」


 恥ずかしいのをごまかすかのように布団を頭からかぶると、あたしは明日に備えてそのまま寝ることにした。



     ◆◆◆



「――ふあぁ……あれ?」


 隣で寝ていたはずのルヴィがいない。


「どういうこと?」


 あたしは不思議に思いながら時計を見ると、時計の針は九時を指している。

 

「……確か、ここの学校の一限目って九時開始だっけ?」


 ……いきなり遅刻なんですけど。


「うわぁっ!? ヤバいヤバい!」


 あたしは部屋にあるドレッサーを開くと、急いでこの学校の制服と思わしき服装へと着替える。


「よしっ! って、どの授業に出ようか決めて無かったぁー!」


 とりあえず、最初にあった適当な授業に滑り込むとしよう!

 そう考えたあたしは寮を飛び出し、急いで校舎の方へと走っていくことにした。



     ◆◆◆



「――というように、金曜の魔導方程式では原子を用いた方程式を解くことになり――」


 何の授業が行われているのかと思って覗いたところ、どうやら金曜の魔導方程式というものを専門に解いているみたい。それにしても広い教室だなぁー。


 よし、ここでいいや!

 あたしはそれとなく教室の後ろから入りこむと、適当に空いている席へと腰を下ろした。


「よしよし、ここで――」

「……おい」

「へっ?」


 たまたま運が悪かったのか、たまたま運が良かったのか。あたしの隣に座っていたのはなんとヴィンセント先輩。そしてその奥にはもちろんミクム先輩まで。


「てめぇ、基礎が知りたいという割には随分とご大層な授業を受けるつもりじゃねぇか」


 先輩は呆れたかのように言うけれど、あたしにとっては何のことか分かるはずもない。


「ど、どういうことです?」


 あたしがヴィンセント先輩におどおどしているのを見かねたのか、ミクム先輩はこう付け加えた。


「……ここ、三年生が主に受ける『応用魔導論3《金曜学》』の授業なんだけど……」

「…………」

「どうした? 急に汗ダラダラになりやがって」


 どどど、どうしよう!? そんな高等なものが分かるワケないじゃん!?


「……教室を間違えたみたいです」

「……だったらさっさと抜け出て――」

「そこの三人」


 後ろでコソコソと喋っていたのが丸見えだったのか、今まで前に立って授業をしていた老眼鏡をかけた女性の先生から、突如指名を受ける。


「授業中にお話をする余裕があるということは、この魔導方程式マジックカリキュレーションが解けるという事でしょう? さあ、前に立って発表してもらいましょうか」

「……っ、たく」


 ヴィンセントが席を立って前へと出ようとしたが、先生は別の方をご指名の様だった。


「そこの眼鏡をかけた女子生徒、貴方に解いてもらいましょうか」

「チッ……俺だったら解けちまうから、あえて解けない奴を指名ってか」


 ヴィンセントは前の方には聞こえない様小さく愚痴を吐いて着席をし、あたしの方を向いてどうしようもないといった様子で首を振る。

 あたしは緊張しながらもその場に立ち、先生にどの問題化をおそるおそる問い返す。


「……えっ、えぇーっと、どの式ですか?」

「この【錬金マテリアライズ】を用いた例題ですけど、何か問題でも?」


 そう言って先生は黒板に白いチョークで書かれた魔法陣を、杖でぐるぐると囲んでこれだと示す。


「さあ、答えてもらいましょうか。これが何を表す式なのか!」

「え、はい……」


 ヴィンセント先輩は無理なら無理だと素直に言うよう促すが、魔法陣をよく見て式を一つ一つ読み解くと、なんとなくわかる気がする。


「……えぇーっと、呪文スペル名までは分かりませんが、恐らく普通の銀より硬度が高い銀を錬成する魔導方程式だと思います」

「……ほう、それで?」


 あたしは解説をするべく黒板の前まで向かうと、魔法陣を指でなぞって一つ一つ解説を始める。


「具体的には魔法陣のこの部分、これが鉱物を示す式であって、更にここから鉱物の種類を示す式がここに。そして最後にモース硬度を示す式があって、これが【錬金マテリアライズ】と繋がっているからそう思いました」

「……呪文スペル名までは言えなかったものの、ほぼ正解といえるでしょう。正確にはこれは【鋼銀シルバリア】=【錬金マテリアライズ】の魔導方程式となります」


 先生はあたしの説明に感心すると、次から授業中に余計なお喋りをしないようにと釘を刺したのち、素直に席に返してくれた。


「よっし! 解けた!」

「あれができて何故基礎ができない?」

「それがー、あたしもよく分からなくて……」

「面白くない……」


 ミクムは怒られることを期待していたのだろうか、面白くないとむくれている。


「あははー……」

「……あの先生、怒ったら【岩石ガンロック】=【投擲シュート】してくるから面白いのに」


 おぉー、聞いただけでおっかないイメージしかないんだけど。ミクム先輩ニヤニヤしてるけど、かなり物騒な話だと思うけど?


「おい、それでケガ人を医務室に運んだのは誰だと思ってんだよ」

「そこ三人うるさいわね。そんなに喰らいたかったのなら今からでも投げつけるわよ!」


 先生の一喝により静かになったものの、あたしはその後も授業の全てを理解するために全力で耳を傾け続けていた。



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