先輩チョロすぎー!
「――うーん、ここは……」
あ、起きた。
「やっほー」
「やっと起きたかクソ野郎」
「え、ふぁあっ!?」
なんだよ、あたしの顔を見るなりすごい勢いで後ずさりしやがって。
結局あの後事態の収集をするために、学校内にある医務室へとあたしは生徒会長に連れられてきていた。
そして実際にあの場で起きた事はロキ先輩が起きてから問いただすって、ヴィンセント先輩は意気込んでいる。
「ったく、てめぇがどうせ新入りの前でいい格好見せようとした結果だろうが」
ベッドの上のロキの目は相変わらずあたしを捉え続け、怯えているという感情を訴えている。
「ち、ちがちが違う――」
「黙れ!! てめぇが馬鹿なマネしなけりゃよかっただけだけの――」
「違う!! この女が俺に向かって【雷光】=【絶撃】を撃ってきたんだよ!!」
この時間帯には医務室に先生がいないおかげか、その話を聞いたのは生徒会長であるヴィンセントだけだった。
「……なんだと」
しかし先輩はどうも胡散臭いと思ったのか、あたしの方を見てそしてロキ先輩の方をもう一度見返す。
「本当だって! 信じてくれよ!」
「……うぅーむ」
唸るように訝しむ先輩だったが、あたしはここで下手に会長から目をつけられても面倒だと思い、女子だけができる秘技を先輩に使う事に。
「……先輩」
「ん?」
「先輩は、あたしがそういうことが出来るように見えるんですか?」
男子にできるのが爽やかな笑顔なら、女子にできるのはうるんだ瞳! というワケであたしは小動物のように先輩の袖を取って、先輩の心に訴えかける。
「あたし、この学校の先輩たちに憧れていて、何とか一緒の学校に生きたと思って頑張ってきたんです。そんなあたしなんて、今の先輩たちに比べたら全然からっきし。今回もあの先輩が凄い魔導方程式を見せてくれるからってついていったら、こんなことに――」
「嘘を言うなでたらめを言うな嘘泣きをするなぁ! このアマ俺よりたちが悪いぞヴィンセント――」
「……そうか、やはりそうだったか」
あっ、チョロイわこの先輩。それに女性に対する免疫がないのか、あたしの握っている手をおそるおそるどかしている。
「おいヴィンセント! 騙されるな! こいつは――」
「黙れ!!」
うお、こわっ! 大人びているから一喝するのにも迫力が違うわ。
「てめぇには既に前歴があるのは分かっているのか? それにテメェの問題行動は今回に限った事じゃねぇ」
「……クソッ!」
ロキ先輩はあたしに向かって「よくも陥れやがったな」とでも言いたげに睨みつけ、あたしはそれに対して怖がるようなそぶりを見せる。
「いい加減にしろロキ……後輩に八つ当たりをするつもりなら、俺は本気でテメェをブチのめすぞ」
そう言うとヴィンセントが寄りかかっている木製の椅子が、より刺々しく変化していく。
あれ、これって暗算ってやつ?
「文句があるなら俺に直接かかって来い。俺はいつでも受けて立つ」
堂々とした風体で言われると、ロキ先輩の小物っぷりがより際立つ。
……それにしても、男らしくてかっこいい。男のあたしでも――あ、今女だから惚れてもいいのか。
「……チッ、分かったよ」
ロキはそう言ってベッドの布団を頭からかぶり、不貞寝を始める。
「……今回は生徒会の完全な失態だ。すまなかった」
「そ、そんな! 先輩が頭を下げなくたって――」
「いや、こいつ等を統括する者としてお前にはわびなければならん。俺にできることがあるなら、何でも言ってくれ!」
「……何でも、ですか?」
「ああ。俺に二言は無い」
ふーん……それならちょうどいいかも。
「だったら、あたしに魔導方程式の基礎を教えてください!」
「……本当にそれでいいのか?」
目の前の先輩はきょとんとした表情でいるが、今のアタシにとっては死活問題だ。
「あたし、今まで暗記みたいな感じで付け焼刃で頑張ってきたから、実は基礎がからっきしなんです。ですから、先輩に手取り足取り教えてもらえるなら嬉しいです!」
「……手取り足取りはできないかもしれないが、それでいいなら俺は構わん。いつでも生徒会室を訪ねてくるがいい」
俺にまかせろと言わんばかりに自分を親指で指さす先輩を前に、あたしは満面の笑みでお礼を言った。
「ありがとうございます!」
満面の笑みを返すと先輩は恥ずかしがって顔をそむけたが、あたしは純粋に先輩が教えてくれることが嬉しかった。
まあ、ちょっとこの先輩チョロすぎなんですけどね。




