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えぇっ!? 実力だけで卒業を!?

「やー、やっと終わったねー」


 なんか最後らへん生徒会長っぽい人が話してたけどよく覚えていないや。なんかぶち抜けた天井をチラチラと見ていたみたいだけど。


「ではこれより寮へと案内する。男子はあちらにいらっしゃるマルガ先生の元へ、女子はこの私、クラックルの元へ集まるように」


 えっ? クラス分けとかないの?


「……どういうワケ?」

「何がですか?」

「クラス分けとかしないの?」

「クラス分け……? ああ! そういえば薫さんには言っていませんでした。ここは個人主義の学校になるのですよ」

「というと?」

「受ける授業も自由、休み時間も自由。ただし期末には何らかの結果という形で魔導方程式マジックカリキュレーションを披露しなければなりません」


 何か話を聞いたところ、元の世界でいうところの大学みたいな感じなのかな?


「つまり、入学試験みたいなのが毎学期あって、それで点数を付けられるってこと?」

「ええ、そういう事です。つまりここで過ごした三年間で、どれだけ得られるものがあるのかは各自の努力次第ということです」

「そうなんだー」


 結構シビアな世界なんだねぇー。まっ、あたしにとってはある意味いつでも卒業できるって意味に等しいけど。

 ルヴィと話をしながらも、あたしはクラックルという初老の女性の先生の元へと集まる。


「では、淑女の皆さんは静かについて来て下さい。他の所では授業が行われておりますので」


 クラックル先生はそう言って、静かにすたすたと大広間から出ていく。

 そしてその後炉の方を、あたしを含む多くの女子生徒がついて行く。

 しばらくすると、前方から爽やかそうな雰囲気を纏う青年がこちらの方へと歩いてくる。


「あら、副会長。一体何の用ですか?」

「ええ、何やら会長殿が授業を抜け出して大広間の修繕に取り掛かるとのことなので、ご助力をと」

「それは立派な心がけですが、結果を出さなければ貴方も例外ではないということをお忘れなく」

「弱ったなぁ。少しは大目に見てくださいよ」


 爽やかに白い歯を見せて笑うその姿に、女子の一部からは黄色い声がとぶ。

 だがあたしは知っている。元男だったあたしは知っている。

 あれはキザな野郎の作り笑顔だと!


「……フフッ」


 一瞬目が合ったように見えたがあたしはすぐに目を逸らし、その副会長とやらが去っていくのをじっと待つ。


「……っ、では失礼します」


 フッフッフ、ざまーみろ。自信満々の顔に泥を塗ってやったぜ。


「薫さん? どうしたのですか?」

「ふっふっふ、何でもないよ!」


 さてさてー、早く寮の方を見てみないと!



     ◆◆◆



「一旦外に出まして、あちらの離れの屋敷が貴方達の寮となります」


 あたしが外に出て気がついたことがある。この学校、ちょうど敷地を囲うように高い壁が建てられている。そしてその上からは更に学校を覆うように、うっすらとした防護幕のようなものが張られている。

 芝生の敷かれた校庭を歩きながら、あたしはこの学校の外観を眺めていた。

 パッと見た感じだと時計塔の下のお城とでもいうべきだろうか、ここだけ少し時代が古いような印象を受ける。


「この膜がさっきあたしが破壊したやつの正体かー」

「この防護幕を構築している魔導方程式、安く見積もっても十二階層の魔法――人智を超えたもので創られているものかと思われます」

「でも【電磁ガンマ】=【直行レイ】で撃ちぬけたよ?」

「……貴方の場合、【電磁ガンマ】=【直行レイ】の出力もおかしいんですよ! ……普通ならもっと、もっと……あぁ、もぅ!」


 悔しがる姿が可愛い……あっ、可愛いで思い出した。


「アリスがいない!」

「アリスさんは男ですよ……」

「そうだった! あっ! ダメじゃん! あんな可愛い子が男しかいないところに放り出されたら、一体何をされるか――」


 薄い本的な妖しげな考えが脳裏をよぎり、あたしは頭を抱える。


「うわぁぁああ、あたしの天使が汚されるぅぅぅぅ」

「……薫さん、私時々貴方の事が分からなくなってしまいますわ」


 今度はルヴィから頭を抱えられながらも、あたしはアリスのことだけは心配なのであった。



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