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第44話 受験生からの依頼その二十三 怖くて結果が待ちきれない

 受験生たちの勝負が終わった。あとは結果を待つだけだ。


 お狸部屋に、久しぶりにメンバー全員が集まった。

 試験を終えた一同は、和やかに談笑をしていた。


 おたぬき様が依頼書を手に、大きな声を出す。

「みなのもの、試験ご苦労だった。おそらく今回の依頼が、おぬしらが解決する最後のものになるだろう」

「え、そうなんですか? 来年もあるじゃないですか」

 こすずちゃんが悟りを開いた笑みを浮かべる。おたぬき様が遠くを見つめる。どうやらただの願望だったらしい。

「私は何も聞かなかった。それで依頼だが、『結果が怖くて待ちきれない』というものだ。どうすれば結果の出るまでの日々を安寧に過ごせるか、みな何か意見はあるか?」

 びしっとこすずちゃんが手を挙げる。

「はい!」

「こすずよ、元気そうだのう」

「試験が終わったんですよ? 元気いっぱいに決まってるじゃないですか、フリーダム、フリーダム! わたしを止めるものはもうなにもありません! 薬事法など知ったことじゃないです!」

 立ち上がるこすずちゃんを無視して、おたぬき様は志野ちゃんに話を振る。

「志野、おぬしはどうだ?」

「わたしは、がんばって極めようと思います」

「何をだ?」

「浪人の王道、です!」

 満面に笑みを浮かべる志野ちゃんを見て、おたぬき様はその場に崩れ落ちた。


 倒れ伏したまま、おたぬき様が絞り出すように声を出す。

「静夜よ、おぬしはどうなんだ?」

「俺も不安だな。試験に手応えはあったんだが」

「おお!」

「落ちるという手応えはあった」

 おたぬき様は静かになったかと思うと、そのまま息を引き取った。ぴくりとも動かない。


 代わりに静夜が真穂さんに尋ねる。

「真穂さんはどうだった?」

「とても順調よ。バイトで昇進できたの」

 真穂さんがやさしい笑みを浮かべる。静夜もやさしく笑みを返しておく。


 がばっと起き上がり息を吹き返したおたぬき様が、何事もなかったかのように話を戻す。

「不安な日々を解消するには、どうすればよいのか。いくつか方法はあるが、簡単なのはやはり不安に思うことだろう」

「どういうことだ?」


 おたぬき様がホワイトボードに『不安』と大きな文字で書き記していく。


「いいか、不安である自分を必死に偽ろうとすれば、より不安は増強される。そうではなく、最初から自分が不安であることを認め、不安だと何度も自分に言い聞かせればよい。そうすればその内に、飽きてくる。それかアルミホイルでも噛んでおれ」

「アルミホイルを噛むとどうなるのか分かりません。実験する必要があると思います」


 こすずちゃんの提案に、おたぬき様が力強く頷く。


「そう言うだろうと思ってアルミホイルを用意しておいた。さあ静夜」

「いいだろう、噛んでやる。だが一人は断る、誰か道連れにしたい」

「この外道め! 人が嫌がることをさせようとするとは!」

 静夜は「はっはっは」と笑いながら、おもちゃ箱からハリセンを取り出す。おたぬき様はすっと下がって逃げる。


 と、小首をかしげていた志野ちゃんが口を開いた。

「アルミホイルを噛んだら、何か起きるんですか?」

「奇跡が起きる」

「え、そんなすごいことが! ま、まかさ合格できるとかですか!」

「『アルミホイルを噛んで君も合格しよう!』か。斬新なキャッチコピーになりそうだ」


 気に入ったのか、そのキャッチコピーをおたぬき様がホワイトボードに書いていく。付け加えで『よい子は絶対にまねしないように』と書き足された。



          ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 依頼:結果が怖くて待ちきれない


 回答:君がよい子でない場合のみ、アルミホイルを噛んで合格しよう!

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