7 四日目。福島・山形(1)
翌朝。
旅の四日目。7月24日、水曜日。午前7時前。
どこからか、ラジオ体操している元気な声が聞こえてきます。
その声を聞きながら、ペンション前にて、出発の準備をする二人でした。
両手でさり気なく前を隠している蘭が、全身で、どうぞ先頭へと促します。これまた、何となく前を両手で隠している行が、一言も文句なしに、むしろ自ら進んで前ポジションを引き受けるのでした。
「ごめんね……」
珍しいことに、蘭が申し訳なさそうにそう言葉をかけてくるではありませんか。だったら行も、言葉でフォローするしかありません。
「構いません」
一拍考えて――
「女の子は、前側でファイテングポーズを取るのかもしれないけれど、男は逆に背中で社会を語るものですから」
なんのこっちゃ。けど笑いを一つ取れたからよしとするのでした。行はさらに続けて、
「ぼくは父に厳しく躾けられましたから。まっすぐな背中には自信あるんです。ずっと見ててもらいたいくらいですよ」
「素敵なご家族ね」
と蘭が受けて、その場は収まったのでありました。
ペンションの玄関から、透けピンクのゴーレムの姿したオーナーが、見送りに出て来られたのでした。こういう家庭的雰囲気が、ペンションの魅力の一つでしょう。
拙い会話でしたが、天気のこと、この先の道路状況など一通り、楽しい雰囲気のうちに話し終わったのでした。
ところが、さあ出発するぞ、というタイミングで。
彼が突然聞いてきたのです。
空を指さしながら。
「※※(ブラジルは見えますか……?)」
――空から視線を戻した行が答えました。
「いいえ、見えません」
するとオーナーは笑顔(?)で答えたのです。
「※※(了解)(OK)(良い)(楽しい旅を)……」
「ありがとうございます」
そうして、行たちは、手を振るゴーレムに見送られて、桧原湖を出発したのでした。




